世界的に「100年に一度の転換期」を迎えている自動車業界で、大手メーカー同士の再編が始動した。
経営統合に合意したのは、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)で、2018年の世界販売台数を単純合算すると、独フォルクスワーゲン、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の連合、トヨタ自動車に次ぐ第4位に躍り出る。CASEと呼ばれる電動化や自動化といった次世代技術の開発には膨大な費用が必要であり、規模の拡大を迫られた格好だ。
お互いに経営統合を繰り返してきた両者
FCAとPSAはその社名が示すように、これまでにも経営統合を経てきた。イタリアのフィアットが米クライスラーを子会社化して2014年に誕生したFCAは、「フィアット」「クライスラー」のほかにも「ジープ」や「アルファロメオ」など13のブランドを抱える。一方のPSAはプジョーとシトロエンが合併して1976年に発足した。「オペル」も傘下に置く。FCAとPSAは2019年10月31日の声明で「新しい時代の課題に対応する産業界のリーダーになる」と表明した。
FCAと言えば2019年5月下旬、ルノーに対して経営統合を提案した一件が記憶に新しい。実現すれば、ルノーと連合を組む日産と三菱も含めて年間販売台数が1500万台を超える世界最大の自動車グループが誕生するはずだったが、ルノーの株主であるフランス政府が経営統合の条件に介入を強め、FCAが6月に提案を取り下げた。それから半年も過ぎていないのに、今度はPSAとの経営統合に合意したのだ。
それほどまでに経営統合を急ぐ背景には、変革期を迎える自動車業界の事情がある。各国が環境規制を強める中で、電気自動車(EV)への移行は不可避となっている。また、ITの急速な発展によって、自動車にも自動運転やインターネット連携といった新たな技術革新が起きている。これまでの「人間が操作して、エンジンで動く」という仕組みが大幅に変わろうとしている。