スルガ銀行の筆頭株主にあの「ノジマ」 傘下企業などから読み取るその狙いは

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   経営再建中のスルガ銀行(本店・静岡県沼津市)の筆頭株主にノジマが躍り出た。 ノジマといえば、ご存じの通り家電量販店を展開する有名企業だ。その意図はどこにあるのか。

  • ノジマの店舗。スルガ銀行をどう立ち直らせる?
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創業家支配からの脱却が求められる中

   10月25日発表した。ノジマは6月末時点でスルガ株の4.99%(議決権ベース)を持っていたが、スルガ銀の創業家とファミリー企業が持つ全株式13.52%を140億円で取得し、持ち株比率は18.52%になった

   スルガ銀は沼津市の相互扶助組織を源流として1895年設立。初代から岡野家の出身者が主にトップを務め、1985年に頭取に就いた岡野光喜前会長は30年以上にわたって経営の実権を握り、個人向け金融(リテール)に特化した経営やインターネットバンキングの積極展開で「優良銀行」として注目を集めたが、その裏で、シェアハウスなどの投資用不動産を対象にした融資にかかわる審査書類の改ざんや契約書の偽造といった不正行為が横行していたことが発覚したのは、すでに読者の皆さんもよごく承知だろう。

   不適切融資は1兆円規模に達し、2018年10月に金融庁から融資業務の一部停止を含む業務改善命令を受け、岡野会長(当時)ら経営陣は引責辞任。「不適切」の一端として、創業家のファミリー企業が融資を受けた450億円の返済が滞っていたことも明らかになった(2019年9月末時点で433億円)。

   外部人材の起用などで刷新された現経営陣によって再建の途上にあるスルガ銀だが、残る最大の課題が創業家との関係の清算だった。行員を不正行為に駆り立てた過剰なノルマなど利益至上主義の根底に、創業家支配による統治のゆがみがあったというのが関係者の一致した見方で、金融庁も業務改善命令の中で創業家との関係を断つよう求めていた。

「金融とインターネット、金融と物販のシナジーを」

   現経営陣は創業家に融資返済を求め、結局、創業家が資産を売却して2020年3月までに返済することで合意。保有するスルガ銀株を手放し、返済と関係断絶が一気に実現することになった。その株の受け皿には、地銀連合形成に意欲を見せるSBIホールディングス(HD)などの名が取りざたされたが、結局、ノジマに落ち着いた。

   ノジマの狙いはどこにあるのだろうか。ノジマの野島広司社長は株取得発表の2日後の10月31日に行われた決算記者会見で、「金融とインターネット、金融と物販のシナジー(相乗効果)を出したい」と述べている。

   実は、ノジマとスルガ銀は5月に業務提携し、クレジットカードの共同事業などを検討してきていた。国内の家電販売が頭打ちとなるなか、金融を新たな収益の柱に育てたいということだが、狙いはカードにとどまらない。ノジマは2015年に携帯電話販売の大手代理店ITXを傘下に収め、2017年に富士通から個人向けインターネット接続事業のニフティを買収している。これら企業群とスルガ銀を有機的につなぐことで、キャッシュレスや先進的なフィンテック事業を手がける銀行に生まれかわらせ、ノジマ本体を含めた相乗効果で発展していこうという戦略を描いていると思われる。

   地域的に、ノジマは発祥の地・神奈川県を中心に首都圏に根を張り、スルガ銀は本拠地の静岡県に神奈川県を加え主要な営業エリアとしていて、親和性があるのも好都合だった。

   ただ、スルガ銀はシェアハウス購入者の債務の元本カットを求められるなど、不適切融資の後始末はまだ残り、信頼回復道はなお半ばだ。

   今後について野島社長は「先方から要望があれば準備はしていこうと思っている」と、出資拡大に意欲を見せるが、銀行に20%以上出資する者は「主要株主」として、金融庁への事前申請を義務づけられ、15%以上出資する株主が役員を派遣する場合も審査が必要とされており、出資引き上げや役員派遣には高いハードルがある。

   諸々の課題を乗り越えてスルガ銀を再生させつつ相乗効果を発揮していけるか、ノジマの挑戦が注目される。

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