安倍首相の「ヤジ」遍歴を振り返る 過去には発言撤回も

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    安倍晋三首相が国会で野党議員にヤジを飛ばした。こうした事態は異例――でも何でもなく、過去にも見受けられた。ただ今国会の序盤では、自身の側近、世耕弘成・自民党参院幹事長からも、国会での「謙虚で丁寧な対応」を求められていた。

    どちらかと言えば、「(野党からの)ヤジにいちいち反応する」(世耕氏が紹介した「声」)印象が強い安倍首相だが、自身が発したヤジでも野党からの反発を招いてきた。どんなヤジが報じられてきたか、あらためて振り返ってみた。

  • 11月6日の衆院予算委で答弁する安倍首相(画像は衆院インターネット審議中継サイトの動画より)
    11月6日の衆院予算委で答弁する安倍首相(画像は衆院インターネット審議中継サイトの動画より)
  • 11月6日の衆院予算委で答弁する安倍首相(画像は衆院インターネット審議中継サイトの動画より)

「座席から言葉を発したのは申し訳なかったと思います」

    2019年11月6日の衆院予算委員会で、加計学園問題を追及中の今井雅人氏(無所属、立民などの統一会派)が、質問を中断して「総理」と呼びかけた。文部科学省内で見つかっていた文書に関連して質問を行っていたが、安倍首相が今井氏を指さして、

「あなたが作ったんじゃんないの」

と発言したと説明して、「大変な侮辱」「謝罪してください」と反発した。

    委員長席周辺ではしばらく、今井氏が指摘した安倍首相の「不規則発言」について、「聞こえなかった」「聞こえた」と理事らが協議していたが、答弁に立った安倍首相は発言したことは認めた。

    発言の趣旨については、当該文書は作成者不明で、誰が作ったかは「水掛け論」になって答えようがなく、「誰だって(作成した)可能性があり、今井氏だって私だって...となってしまう」というつもりで「つぶやいた」と説明。一方で「正確な発言ではない訳でございます」「座席から言葉を発したのは申し訳なかったと思います」と陳謝した。

    今井氏はなお、発言の「取り消し」も求めたが、安倍首相はこれには応じず、「指をさしてですね、不規則発言がございました」と認めたうえで、

「ああいう形で発言するのは、それぞれが控えないといけない事かもしれませんが...」

と反省を示しつつ、取り消しには応じなかった。「それぞれ」の内容については、自身側だけでなく、野党側のヤジ行為にも釘を刺すかのようにも受け取ることができるし、「指さし行為」と「ヤジ」を意味するとも考えられ、はっきりしない。

   審議が終わったあと、棚橋泰文委員長(自民)は西村明宏・官房副長官を呼んで、閣僚席からの不規則発言について「謹んでほしい」と申し入れた。安倍首相と今井氏のやりとりが念頭にあるとみられる。

朝日「首相のヤジはいまに始まったことではないが、」

翌7日付の朝刊社説で安倍首相の国会答弁について取り上げた朝日新聞は、このヤジにも言及し、

「首相のヤジはいまに始まったことではないが、」

と指摘したうえで、「政権の政治姿勢が問われている集中審議のさなかに、不見識きわまるふるまいである」と断じた。

「いまに始まったことではない」安倍首相のヤジについて、17年6月の社説(18日付)で批判的に言及していたのは、これも朝日新聞(「安倍政権 『議論なき政治』の危機」)で、

「首相自ら野党の質問者にヤジを飛ばす。それなのに、野党からヤジられると『私が答弁しようとすると、ヤジで妨害するんですよ』などと繰り返し、審議時間を空費する」

としていた。具体的なヤジ内容については、6月の別の紙面で、6月5日の衆院決算行政監視委員会での「くだらない質問」「いいかげんな事ばっかり言うんじゃないよ」などを伝えている。

さらに2015年段階でも、「安倍首相、またヤジ」(朝日デジタル版、8月21日)の見出しが躍っていた。8月21日の参院特別委員会で、答弁中に混同があると指摘されると、

「そんなこといいじゃないか」

と発言したことを取り上げている。この際は委員長から注意を受けると、発言を撤回した。

    他にも、5月の衆院特別委での「早く質問しろよ」、2月の衆院予算委で閣僚の献金問題について質問が出る際にあった「日教組はどうするんだよ」といったヤジにも触れている。2月のヤジについては読売新聞も、野党側のヤジ問題も含めて「ヤジ巡り泥試合 大島・予算委員長が両成敗」(15年2月21日付朝刊)と報じている。

若手時代から「よくヤジ」と報じられたことも

    安倍首相については、1993年の衆院選初当選の当初から「よくヤジを飛ばしていた」という自民党同期会メンバーの証言もあり、朝日記事(2018年1月9日「『ポスト安倍』師走の思惑~(略)」)で紹介している。

    また、発言者がのちに訂正したため、必ずしも参考にはならないが、河村建夫・元官房長官が18年12月12日、安倍首相らとの会合を終えて、記者団に一旦は、安倍首相が「若い連中はもっと元気を出して、ヤジがもっと出てもいい」と語ったと説明。しかし程なく、先の内容は首相が言ったものではなかった、と訂正コメントを出したこともあった。

今国会で安倍首相は、冒頭で紹介した世耕氏による代表質問(10月8日)を受け、

「厳しいご忠告も頂いたところですが、この忠告を拳拳服膺(けんけんふくよう=常に心に留めて忘れずにいること)し、野党の皆様からも、謙虚で丁寧な総理大臣だと言ってもらえるよう努力を重ねていきたい」

と意気込みを語っていた。今国会の会期末は12月9日だ。

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