韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が破棄を決めた日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)をめぐり、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相が2019年11月4日の国会答弁で、改めてGSOMIAは必要だとする立場を示した。
ただし、GSOMIA延長のためには輸出管理許可や「ホワイト国」除外の問題を「一緒に解消しなければならない」とも主張。韓国メディアの社説も、GSOMIA破棄と輸出規制は同時に撤回されるべきだとの論調が多い。
ソウル経済「解決できれば徴用などの他の懸案解決にも肯定的影響」
鄭氏は国会での答弁で
「私たちの安全保障に少しでも役に立つのであれば、このようなものを維持しなければならない、というのが私の立場だ」
などと述べている。このままの状態では、11月22日にGSOMIAは期限切れを迎える。残された時間は多くない。
11月4日には安倍晋三首相と文氏が訪問中のタイ・バンコク近郊で約10分間にわたって言葉を交わしたこともあり、11月5日には社説で日韓関係を論じる韓国メディアも多かった。その多くで、GSOMIA問題も触れている。
例えば
「問題は、両首脳の決断である。韓国はGSOMIAを延長し、日本は輸出規制措置を撤回すればよい」(韓国経済)
「今回の懇談で両国首脳が確認したように、後続の実務会談を通じてGSOIMA終了決定と輸出規制の同時撤回する合意を模索することが望ましい」(韓国日報)
といった具合で、鄭氏と歩調を合わせた議論も多い。
一方「ソウル経済」は、輸出管理問題では
「韓国政府が世界貿易機関(WTO)に日本を提訴したうえ、日本の態度も頑強で、最終的な解決は容易ではない」
として、まずはGSOMIA問題に集中すべきだと主張した。
「この問題が解決できれば徴用などの他の懸案解決にも肯定的な影響を与えられる」
と、GSOMIA問題を他の問題解決に向けた突破口にしたい考えだ。
「日本の輸出規制の原因は文政権に」主張で異彩
ソウル新聞は、韓国政府がGSOMIA延長を判断できるだけの環境整備が必要だとの立場で、
「日本政府も、少なくとも徴用問題を協議している間、韓国企業への輸出規制を収めなければならない。今は日韓間の対立が悪化しないように両政府が率直な対話を交わす時だ」
として、日本側に対応を求めた。
異色なのが文化日報で、
「日本の輸出規制の原因は、最高裁の徴用判決を放置し請求権協定に否定的な態度を見せてきた文政権にある。今からでも文大統領は1965年体制を守り、徴用判決を国内的に解決すると明らかにし、GSOMIAの対立を源から解消しなければならない」
と主張。元徴用工をめぐる判決を韓国政府の責任で処理すべきだとした。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)