「あの子たちを見ていたら応援せずにはいられない」
そもそも原動機研究部は、燃費性能を競う「エコマイレッジチャレンジ」(主催・ホンダ)や「静岡県高校生エコラン大会」(主催・県工業高等学校長会)といった大会への出場が活動の大きな部分を占めている。使用する車両は自分たちで製作し、大会規定のエンジンを積み、改良と調整を重ねる。エンジンや車両そのものの仕組みも学んでいく。
約2年前、たまたま学校を訪れた福岡さんのバイクに、原動機研究部は目を引かれた。中古車販売業を手がける福岡さんは、知人からボロボロのスクーターを譲り受け、学校側に報告したうえで部に提供。本物の市販バイクに部員は興味津々となる。まともに稼働しなかったスクーターを分解し、メンテナンスし、組み立てる作業を夢中で繰り返すうち、ついにエンジンがかかった。
エンジンがかかるなら動かしてみたい。しかし学校の決まりでは原則、免許取得ができない。そこで考えたのが、免許なしで走れるFSWの練習用カートコースだ。未成年も保護者の同意のもとで使える。原動機研究部は顧問に説明し、福岡さんら保護者同伴のもとで、18年末ごろから週末を利用してカートコースでの練習をはじめた。
カートコースを使うにも費用がかかる。部員は学校の許諾を得て、農家に声をかけた。農機具のメンテナンスや畑仕事を手伝い、小遣いを稼いで、コース代やガソリン代などに充てた。
しかし、高校生の不慣れな運転を、周りは「遅い」と邪魔者扱い。悩んだ福岡さんは、知人に運転レッスンをしてもらえないかと相談した。イタリアのオートバイ「ドゥカティ」乗りが集まる愛好家団体「ドゥカティ・オーナーズクラブ・ニッポン」(略称・ドカポン)代表の岡丈樹さんだ。福岡さん自身も、約2000人が所属するドカポンメンバーの1人。
岡さんが取材に明かす。
「相談を受け、基礎から教えようかと支援を始めました。はじめは私たちも、とりあえず速く走れるようになれればいいのだろうくらいに思っていましたが、あの子たちを見ていたら応援せずにはいられないというか、教えに行くと物凄くひたむきに、真剣に取り組んでくれます。バイクを愛する気持ちが伝わってきます。
自分たちが大人になって失っていた情熱のようなものを、思い出させてくれています。教えながら私たちが学ぶものも多いです」
岡さんはヘルメット、つなぎ、ブーツといったライディングギア、さらにはバイク本体も、ドカポンメンバーから寄付を募り提供した。ライディング講師には国際Aライセンスを持つライダーも呼んでいる。技術だけでなく、運転のための知識も座学で教えているという。