消費税率が2019年10月から10%に引き上げられ、9月に駆け込み需要で潤った百貨店や家電量販店では売り上げ減が懸念されている。「キャッシュレス決済」によるポイント還元制度などで比較的堅調なコンビニエンスストアも先行きは見通せず、消費の行方に注目が集まっている。
増税前の夏ごろまで、政府関係者や小売業界の中では「今回は駆け込み需要は少ないのではないか」という見方が多かった。酒類を除く飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率や、中小店舗で買い物をした際、クレジットカードなど「キャッシュレス決済」で支払えば最大5%ポイントを還元する制度が新たに導入されるなど、さまざまな政策効果が働くとみられていたからだ。
「何とか工夫して乗り切りたい」
しかし、業界によっては直前の駆け込み買いはやはり急増した。日本電機工業界が10月下旬に発表した9月の白物家電の国内出荷額は前年同月比20.2%増の2385億円で、9月単月では過去最高となった。日本百貨店協会が発表した9月の全国百貨店売上高も既存店ベースで同23.1%増と、前回の増税時の前月に当たる2014年3月(同25.4%増)以来、5年半ぶりの高い伸びになった。宝飾品や時計など、増税の影響が大きい高額品を中心に販売が大きく伸びたためだ。
食料品の売り上げ比率が高いスーパーの9月の売上高は微増にとどまるケースが多かったが、軽減税率の対象外である酒類の駆け込み需要はやはり大きかった。ビール大手4社の9月のビール類販売は、キリンビールが同約24%増だったのをはじめ、全社が2桁増を確保した。
こうした駆け込み需要に沸いた業界は10月に入り、さっそく反動減に悩んでいる。ある老舗百貨店は「覚悟していたとはいえ、10月の売り上げは伸びず、いつまで影響が続くか心配」と話す。軽減税率が適用される食料品の販売に力を入れるなど、「何とか工夫して乗り切りたい」とも語る。家電量販店の客も減っているほか、酒類業界も10月の販売は厳しく、キリンビールは前年同月比で1割程度減少しているとされる。
「そもそも消費マインドが弱いので、増税による消費の冷え込みは今後、一段と厳しくなるのではないか」(市場関係者)との見方も強く、流通関係者の不安は募るばかりだ。
「還元制度」終了後の懸念
一方、10月以降も意外に堅調なのはコンビニエンスストアだ。キャッシュレス決済によるポイント還元制度に伴い、セブン-イレブン・ジャパンをはじめとした大手コンビニは、キャッシュレス決済で支払えば、その場で2%分を値引きする対策を実施している。実際の値引き額はわずかでも、堅実な支払いを好む若い世代を中心にコンビニでの買い物を好む傾向が広がっているという。
ただ、こちらも2020年を危惧する声が早くも強まっている。キャッシュレス決算の還元制度は6月までの9か月間という期間限定だ。「還元制度が終わる直前に、再び駆け込みが起こる可能性は高い。今年より、むしろ(来年)7月以降に生じる反動減の方が深刻ではないか」(流通関係者)と懸念する声さえ出ており、消費の冷え込みへの懸念は根深い。