JR西日本は10月24日、最終電車の時刻を繰り上げ、深夜帯ダイヤを見直す方針を発表した。関西では最終電車の時刻繰り上げに対して、様々な意見が飛び交っている。
鉄道業界のトレンドを踏まえた上でJR西日本の方針を考察したい。
労働力不足、社会環境の変化から終電繰り上げへ
JR西日本による深夜帯ダイヤ見直しの背景には労働力不足と社会環境の変化が挙げられる。JR西日本の近畿エリア(在来線)では終電から初電までの時間に線路などの保守作業を実施。土曜日、日曜日を含め日々100カ所以上で、約1500人の社員や建設会社の作業員が従事し、鉄道の安全を支えている。
しかしこの10年間で作業員が急速に減っており、建設業全体における働き手は9%減少。JR西日本のあるグループ会社では鉄道保守に従事する作業員が23%減少した。働き手の減少の背景には休みが取りにくく、働きづらいという労働環境が挙げられる。また近年、主要駅では利用客の帰宅時間が早まり、深夜時間帯の利用が減少している。
このような要因からJR西日本は24時以降を中心に、最終電車の時刻繰り上げや深夜帯ダイヤの見直し検討に着手した。仮に大阪駅発の最終電車を24時に繰り上げた場合、年間約10%の作業日数の減少が期待できるとしている。
今後の検討にあたり、他鉄道との連絡を考慮した上でのダイヤ調整や夜の都市観光、観光産業、深夜営業の動向なども勘案するとしている。
人口減少社会を見据え様々な手段を講じる鉄道会社
労働人口が減少する中で、いかに労働環境を改善し効率的に限られた人数で作業を進めていくか。現在、多くの鉄道会社では人口減少社会を見据え、様々な手段を講じている。JR東日本は10月8日に常磐線(各駅停車)にATOを用いた「自動運転」の導入を発表した。身近な例だと遠隔管理や監視カメラにより、都会にある駅でも利用者が少ない時間帯の無人化が進められている。
鉄道業界の一連の流れを考慮すると、JR西日本が発表した最終電車の繰り上げを含む深夜帯ダイヤの見直しは納得できる。
(フリーライター 新田浩之)