阪神・メッセンジャーが2019年シーズン限りでの引退を表明したことは、選手たちにとっても驚きだった。
周囲からは「まだまだ先発で投げられる」と惜しむ声が上がるほど。阪神に10年間在籍して通算98勝84敗、防御率3.13。今季は度重なる故障で自己ワーストの3勝に終わったが、2ケタ勝利が7度と毎年コンスタントに成績を残した。自身の状態が悪くてもきっちり試合を作り、長いイニングを投げる姿はまさに「エース」だった。
2ケタ勝利は西勇輝のみ
このメッセンジャーの抜けた穴を埋めるのは容易ではない。今季2ケタ勝利を挙げたのはオリックスから昨オフにFA加入した西勇輝のみ。青柳晃洋が自己最多の9勝、2年目左腕の高橋遥人も先発ローテーション入りするなど台頭したが、まだ経験が浅い。信頼を勝ち取るにはもうしばらく時間がかかるだろう。
持っている能力を考えれば、エースにならなければいけないのが藤浪晋太郎だ。高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をマークした右腕だが、ここ近年は完全に輝きを失っている。制球難に苦しみ、フォーム改造など試行錯誤を繰り返しているが結果が出ない。昨季は1試合の登板のみ。シーズン終盤は快進撃を続けるチームの中で戦力になれなかった。
トレード移籍の噂が絶えないが、球団関係者は「先発ローテーションに入る能力を持った投手は数多くいますが、エースの資質を備えた投手は一握りです。藤浪は球界のエースになれる男です。まだ25歳。メッセンジャーの引退で自覚が芽生えてほしい」と期待を込める。
元々、藤浪は制球の良い投手ではない。15年に自己最多の14勝をマークして221奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得した時も、82四球、11死球、9暴投はいずれもリーグワーストだった。小さくまとまらず、荒々しく力勝負で打者をねじ伏せる投球をもう一度――阪神ファンは藤浪の復活を心から待ち望んでいる。