東京ビッグサイト(東京都江東区)を中心に2019年11月4日まで開催されている「第46回東京モーターショー2019」には187の企業・団体が参加し、153だった前回(2017年)を上回った。半面、花形の海外勢の出展はメルセデス・ベンツなど一部にとどまり、存在感の低下も印象付けた。
自動車が誰にとっても憧れの存在だった時代はとうに過ぎ去り、あの手この手で今後の顧客となりえる若者や子供に自動車への関心を持ってもらおうと前のめりになっている印象が会場からは感じられた。
eスポーツやドローンショーなども盛り込んで
コンピューターゲームの腕を競う「eスポーツ」の大会、子供が職業体験をする施設「キッザニア」と組んだ出展、さらには500期もの小型無人機ドローンがLEDで発光しながら夜空を舞うショー。これらはすべて今回の東京モーターショーに合わせて実施されたイベントだ。各メーカーが最先端の技術を駆使したコンセプトカーや新型車を展示すれば、多くの自動車ファンが集まる......という時代は、もはや過去のものだ。
国内の新車販売台数はこの30年間で約3割減少して、2018年は中国の5分の1にも満たない527万台だった。
こうした「自動車離れ」は東京モーターショーの存在感にも影を落とす。入場者数は1991年の201万人をピークに減少傾向にあり、前回は77万人まで落ち込んだ。今回は主催する日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が旗振り役となり、入場者を100万人に回復させる目標を立てた。これまでになかったような数々のイベントだ。
所有から「共有」へと変わる時代の中で
曲がり角を迎える東京モーターショー、そして自動車業界。もちろん、こうしたことはメーカーにとって百も承知であり、人口減少も進む日本で自動車を購入する個人はさらに減ると見込んで経営戦略を策定している。効率的な移動を可能にする次世代交通体系「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の本格化を念頭に、自動運転や電動化などの技術を開発しているのもそのためだ。MaaSが現実となれば、自動車は「所有」するものではなく、「共有」するものになる。
かつて豊田社長は、トヨタ自動車がスポーツカーの開発を続ける理由について、「100年前から移動手段は馬から車に代わっていったものの、ホースレースはまだ続いているし、乗馬も楽しまれている」と説明している。豊田社長が予想するように、未来の自動車は一部の人にとって「娯楽の手段」として残るものの、多くの人にとっては「生活の足」として共有する存在になるかもしれない。こうした歴史的な転換が進みつつある中で、今回の東京モーターショーは自動車がある社会の未来を、功罪問わず示すことができただろうか。