識者と外務省の見解は?
同志社大学法学部の尾形健教授(専門は憲法)は、J-CASTニュースの取材に対し、次のように指摘した。
「海外渡航の自由の意味にかかわるが、行きたい所に行って会いたい人と会うことは、人の精神的自由の側面も含むと考えられる。精神的自由については、萎縮効果を懸念しないといけない。こういう規制が自分にも及ぶから行動するのは差し控えようとか、表現するのはやめようという効果が非常に出やすい自由と考えられていて、海外渡航の自由についても同じことが言えるのではないか。ジャーナリストの方であれば危険を顧みずに行く場合もあるかもしれないが、旅行を趣味でされている方にとっては、まさに萎縮効果が働いてしまう可能性があるので、そういった観点も踏まえて、行政の裁量の統制を裁判所にはしっかりしてほしい」
告知聴聞の手続きについては、次のように言及する。
「行政手続法には、緊急を要する場合は意見陳述の手続きを省略することを認める規定があって、旅券返納命令を受けたフリーカメラマンの杉本祐一さん(編注:外務省から受けた返納命令の取り消しなどを訴訟で求めた。一、二審は棄却され、18年3月に敗訴確定)の裁判では、その点が争われたが、裁判所は緊急性が認められると判断した。いまパスポートを戻しておかないと、渡航予定を繰り上げて出国する可能性があった、ということのようです。確かに旅券の性格上、緊急性の場合には告知聴聞を省略せざるを得ないのはある程度わからなくはないが、しかるべき告知聴聞の手続きを踏むのが大原則」
J-CASTニュースでは10月21日、外務省旅券課首席事務官にも取材を試みた。担当者は、「個別の案件にはお答えできない」などと答えるに留めた。
次回の裁判は、12月17日14時から。東京地裁で、原告女性本人への尋問が予定されている。