アルバイト女性に「旅券返納命令」 スマホ内画像など理由にクウェート入国拒否...取り消し求め国訴え

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原告側は外務省の「情報提供」訴える

   原告の女性は、2018年11月、旅券返納命令の取り消しなどを求めて、訴訟を起こした。

   問題となった画像について、原告側は「(女性は)ISILとは何の関係もなく、日本人2名がISILに拘束されて身代金の支払いを要求された頃に、日本や海外において、インターネット上で流行したISILに関する図像をコラージュして発表することが流行した際に、原告も関心を持って、ISILの戦闘員などの画像を大量にスマートフォンで収集していたことがあり、それがそのまま保存されていたことから、クウェート国の官憲がその画像を問題にしたものと考えられる」などと主張し、「在クウェート日本国大使においては、旅券法13条1項1号に該当するかどうかを慎重に判断する必要があった」と指摘。「旅券法13条1項1号に該当するとして、直ちに、同法19条1項2号により旅券返納命令を発していると考えられ(中略)在クウェート日本国大使による本件処分は、その判断の基礎とした事実関係に事実の基礎を欠くものとして、その裁量権を逸脱又は濫用するもの」と論じている。

   代理人の山下幸夫弁護士は、取材に対して、旅券法13条第1項第1号に該当することが「取消事由で旅券返納命令を出す理由になりうるが、絶対そうしないといけないわけじゃない」と語り、「取消事由だから、取り消すかどうかは日本側の裁量。今回、ISIL戦闘員の写真があったからといって、接触したことになりません」と否定する。

   また原告側は、「通常、入国審査において、所持しているスマートフォンに保存されている画像のことが調べられる訳ではない」などと指摘。「外務省の職員が、原告が日本を出国する際に、渡航先を質問して聞き出した上で、その後、当初の予定を変更してクウェートに向かったことを認識しているようである」とした上で、「外務省の職員が、クウェート政府側に、事前に、原告について情報提供をしていたことから、クウェートの官憲が、原告のスマートフォンを調査することになった可能性がある」などと訴え、「外務省による自作自演」と主張する。

   一方の国側は、全面的に争う姿勢を示している。準備書面で国側は、

「原告に海外渡航を認めなければならない特段の事情があるとはいえず、本件処分に在クウェート日本国大使の裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえない」
「(旅券)法13条1項1号は、飽くまでも、『渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者』と規定しているのであって、かかる規定ぶりからしても、同号は渡航先の判断の当否を問題としていないことは明らかである。また、実質的に考えても、渡航先の当局が行ったその国の出入国管理に関する判断の当否を我が国の外務大臣等が判断することは主権国家の原則からしても不適切である」
「クウェート国は、本件処分当時、ISILによる暴力的過激主義の問題を抱えていた中東諸国に位置する国の一つであるところ、原告は、同国に赴くに当たり、自己の携帯電話(スマートフォン)にISIL戦闘員の写真を保存していたというのである。これらの事情をも踏まえると、クウェート国が、原告の携帯電話(スマートフォン)におけるISIL戦闘員の写真等から原告とISILとの関係を疑い、国外退去処分を検討すること自体無理からぬ状況にあった」
「クウェート国が行った再入国禁止措置が付された国外退去処分を根拠として行われた本件処分について、裁量権の逸脱又は濫用があるということはなおさら困難である」

などと主張し、反論している

   原告側が主張する「情報提供」については、「外務省職員がクウェート国政府に対して原告に関する情報を提供した事実はない」と否定する。

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