閣僚の辞任ドミノ警戒――1週間で2閣僚が辞任する異常事態をうけ、こんな見出しが新聞に躍る中、今度は「身の丈」発言の炎上余波で批判が高まっていた、大学入試での英語民間試験の活用について、直前に迫っていた導入の見送りが発表された。
2閣僚の辞任と今回の延期、いずれも問題の発覚・炎上からあまり時間をあけないタイミングでのスピード決着を目指す対応となった。国会での野党からの攻撃を封じる「素早い機動力」の賜物なのか、「長期政権の緩み」(日経新聞)の影響による「粘り腰に欠ける安易な対応」なのか。
「身の丈」発言への批判
「身の丈」発言の主、萩生田光一・文科相は2019年11月1日、大学入学共通テストで英語民間試験を活用する問題で、予定されていた20年度からの実施(19年11月1日から、受験に必要な共通IDの申し込み開始)を見送り、抜本的見直しをしたうえで24年度からの導入を目指すことを発表した。当初は予定通り実施する姿勢を示していた。
萩生田文科相がBSフジ番組で「身の丈」発言を行ったのは19年10月24日(木曜)夜。週が明けて月曜28日には記者団の前で発言を謝罪、30日には衆院文科委員会で謝罪した。この間、英語民間試験への批判も高まっていった。17年春に実施方針案が公表されてから2年以上が経ち、これまでにも一部で批判は出ていたが、「身の丈」発言を受けて一気にヒートアップしていた。
そして11月1日の実施見送り発表となった。当日の朝刊(東京最終版)では、読売新聞が1面トップで「政府は(10月)31日、(略)見送る方針を固めた」と特ダネで報じた(毎日は「延期へ調整」)。このスピード判断には、「受験生の混乱を避けるため」だけでなく、萩生田文科相への批判がこれ以上高まらないように、との思惑が含まれている可能性は十分にある。
同じ日の朝日新聞1面は河井克行法相が10月31日に辞任した記事。辞任は、妻の選挙事務所での公選法違反の疑いが週刊文春(31日発売)に報じられたことを受けたものだ。その1週間前の25日には、秘書が有権者に香典を配った問題で菅原一秀・経産相(当時)が辞任していた。
こうしたスピード決着を図ろうとする動きは、国会での野党からの追及を避ける思惑があるとみられる。