「預金シフト」招く可能性も
ただ、これは「富裕層向けの特別サービス」というシティの特殊性と見るのが至当。現実的に考えると、現在の普通預金金利0.001%、定期預金でも普通預金より1~2桁上とはいえ、キャンペーンなどを除けば1%にも満たない。例えば常時100万円程度残高のある普通預金の給与口座で年間の利子は10円程度しかなく、1000円単位の口座維持手数料がかかれば、実質的に預金金利は大幅マイナスということになり、ただちに預金者に受け入れられるとは、考えにくい。
銀行業界の実情からも簡単ではない。日本全体の口座数は人口の10倍の約12億とされ、実際に使われているのはうち半分とも6割程度ともいわれ、4~5割は「休眠状態」。仮に口座維持手数料が課せられれば、預金者は複数の口座を一つにまとめるはずで、中小金融機関からメガバンクや地域一番の大手地銀などへ預金シフトが起こるかもしれない。 ゆうちょ銀行の動向も微妙だ。「ユニバーサルサービス」提供義務があるゆうちょ銀が口座維持手数料を取るのは難しいとみる関係者は多く、ゆうちょ肥大化問題の再燃もありえる。
このように口座維持手数料導入のハードルは高い。銀行が発行する通帳には印紙税(1口座当たり年200円)が必要で、今は銀行が負担している印紙税を預金者から徴収し、実質的な口座維持手数料とする案もあるが、これとて、容易ではない。銀行業界としては当面、世論の動向を慎重にうかがいながら、実現可能性を探る展開が続きそうだ。