巨人が今2019年オフのFA戦線に乗り出す構えだ。現時点で獲得に向けて調査に動いているのは、FAを宣言しているロッテ鈴木大地内野手(30)と楽天・美馬学投手(33)だ。鈴木、美馬ともにFA移籍をした場合、金銭もしくは人的補償を必要とするランクの選手とみられ、獲得球団は金銭、人的補償のいずれかが発生する。昨年は長野久義(34)、内海哲也(37)が人的補償となり物議をかもしただけに、今年も頭の痛い問題となりそうだ。
巨人のFA人的補償の歴史を振り返ると、1993年にFA制度が導入してから13人の選手が人的補償として他球団に移籍している。95年オフにFA史上初の人的補償となった川辺忠義投手が、巨人から日ハムに移籍した。2001年には平松一宏投手が中日に移籍し、13年以降は人的補償で7人の選手が他球団に移籍している。
広島・一岡はリーグ3連覇に貢献
2005年、06年は大物選手の人的補償が相次いだ。05年オフに江藤智内野手が西武に移籍。江藤氏は、1999年に広島からFAで巨人に移籍。当時の長嶋茂雄監督から背番号「33」を譲り受けるなど、破格の待遇で巨人に迎えられた。入団4年目までは100試合以上に出場し、一定の結果を残したものの04年は55試合の出場にとどまり、05年オフに西武からFA移籍した豊田清投手の人的補償として西武に移籍した。
翌06年オフには工藤公康投手(現ソフトバンク監督)が横浜に移籍。工藤氏の移籍に関しては、工藤氏が28人のプロテクトリストから外れたとの報道が先行し、横浜が獲得の候補に挙げていることも報じられた。極秘事項であるプロテクトリストの情報が漏れ、すっきりしない移籍となったが、工藤氏は球団に対して一切、恨み言を残さず球団に理解を示す発言をしている。
若手が人的補償の対象となったのは、2013年の一岡竜司投手(28)、14年の奥村展征内野手(24)、16年の平良拳太郎投手(24)だ。11年のドラフト3位で巨人に入団した一岡は、12年、13年の2シーズンを巨人で過ごし、13年オフに大竹寛投手(36)の人的補償として広島に移籍した。巨人は経験豊富な大竹を獲得と引き換えに若手の一岡を放出。一岡は広島移籍後、貴重な中継ぎの戦力としてチームのリーグ3連覇に貢献した。
奥村は最年少の19歳で人的補償の対象に
一方、2013年のドラフト4位で入団した奥村は、1軍での出場がないまま14年オフに相川亮二捕手の人的補償としてヤクルトに移籍。奥村は当時19歳で、最年少で人的補償の対象となった。ヤクルトに移籍して出場機会は増えたものの、レギュラーに定着するには至らず、さらなる飛躍が期待される。
平良もまた若くして人的補償の対象となった選手のひとり。2013年ドラフト5位の平良は、16年にプロ初登板。この試合で結果を残せず、このシーズンは1軍での登板は1試合にとどまった。この年のオフに山口俊投手の人的補償としてDeNAに移籍。18年には先発として13試合に出場し、今シーズンは14試合に先発するなど、本来の力を発揮しつつある。
人的補償として他球団に移籍して結果を残すもの、キャリアハイに届かないものそれぞれだが、若い時期に巨人から移籍した一岡、奥村、平良の3人は今後の活躍に期待がかかる。巨人は今年も意中の選手をFAで獲得できればプロテクト、そして人的補償問題が浮上するのは必至。今オフはどのような展開が待ち受けるか...。