JR東日本は10月8日、自動列車運転装置(ATO)の導入を発表した。
多くのメディアは「自動列車運転装置」を「自動運転」と表現している。「自動運転」と聞くと何やら未来の新技術のように聞こえるが、鉄道の世界では意外とすでに、自動運転の導入は進んでいる。今回は鉄道の自動運転を解説したい。
JR東日本が行う「自動運転」とは?
JR東日本は10月8日、常磐線(各駅停車)綾瀬~取手間で自動列車運転装置(ATO=Automatic Train Operation)の導入を発表した。導入時期は2020年度末とのこと。ATOの導入後にホームドアも設置され、輸送の安全、安定性の向上を図るとしている。
ATOは運転手が発車時にボタンを押すだけで、加速から減速、停止まで自動で運転を行うシステム。「自動運転」と聞くと「無人運転」を想起させるが、今回のJR東日本の取り組みは運転士付きの「自動運転」だ。今後ATOの開発を進め、運転士不要の「ドライバレス運転」の実現を目指すとしている。
踏切がある路線でも導入進むか?
自動車の世界でも聞かれるようになった「自動運転」だが、鉄道の世界ではどの程度、導入が進んでいるのだろうか。
ATOを導入する常磐線(各駅停車)と相互直通運転をしている東京メトロ千代田線では運転士が乗務する形でのATO運転を既に行っている。東京メトロでは営団地下鉄時代の1962年に日比谷線でATO運転の公開試験運転を実施した。一方、日本で初めて無人運転で営業したのは1981年開業の神戸新交通ポートライナーだ。このように国内では昭和時代から鉄道の自動運転は実用化されている。
「昭和で実用化しているのだから、どんどん自動運転を普及させればいいのに」という声が聞こえてきそうだが、事情はそこまで単純ではない。ATOを導入している大半の路線は地下鉄か高架線の新交通システム。つまり基本的に踏切がなく、容易に人が立ち入れない環境にある路線だ。
2020年にATOが導入される常磐線(各駅停車)の綾瀬~取手間にも踏切はない。今後は踏切が多く存在する一般の鉄道路線でATOが本格導入されるかに注目したい。
(フリーライター 新田浩之)