政府答弁「公式に定められたものがあるとは承知していない」
これまでの写真による確認では、かなりのバラつきが見受けられるが、今回の「即位礼正殿の儀」における安倍首相の万歳の仕方(手のひらの向きなど)は、公式に定められた方法だったのだろうか。政府の「天皇陛下のご退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典委員会」(委員長・安倍首相)の事務方、皇位継承式典事務局(内閣府などで構成)に今回、10月24日に確認すると、「万歳三唱の際の万歳の手のひらの位置などに関しては、具体的な決定はなかった」との回答だった。
実際、政府見解としては「万歳三唱の所作については、公式に定められたものがあるとは承知していない」(2010年2月)という答弁が閣議決定されている。当時は民主党政権下で鳩山由紀夫氏が首相だった。質問主意書を提出したのは、自民党の木村太郎衆院議員(故人)。「天皇陛下御在位二十周年」に関連して、
「式典の結びに天皇陛下の御前にて、鳩山総理の御発声で万歳三唱をしたが、手のひらを天皇陛下側に向け、両腕も真っ直ぐに伸ばしておらず、いわゆる降参を意味するようなジェスチャーのように見られ、正式な万歳の作法とは違うように見受けられた。日本国の総理大臣として、万歳の仕方をしっかりと身につけておくべきと考えるが、その作法をご存知なかったのか、伺いたい」
と質している。木村氏が指摘した「正式な万歳の作法」については、後述の偽文書「太政官布告 万歳三唱令」(の付随文書)記載の内容と共通部分があり、影響を受けた可能性もある一方、偽文書が出回る(約30年前)以前から木村氏主張のロジックで歴代の先輩議員より(特に自民党内で)受け継がれていたとみられる状況もあり、実際に50年近く前の「衆院解散」時に手のひらを「内側」にする議員の姿も写真に納まっている。
この「万歳三唱令」と今回の安倍首相の万歳三唱とを結びつけた記事を式典翌日の10月23日に報じたのは熊本日日新聞だ。見出しは「偽書『万歳三唱令』、安倍首相の所作で再注目」(ウェブ版)。同紙は18年2月、ネット上などで偽文書との指摘もありつつ、正しい文書だと信じる人もいた「万歳三唱令」や付随文書を創作したと名乗り出た熊本県内のグループ3人の証言を詳報したメディアだ。