映画演劇大手、松竹の株価が好調だ。
2019年10月16日、前日発表の19年8月期連結中間決算の内容を好感した投資家の買いが集まって年初来高値を更新した。その後もさらに高値を更新している。業績に好影響を与えたのはは7月19日公開の東宝映画「天気の子」などがヒットしたこと。自社配給作品ではないものの、系列シネマコンプレックスが賑わったことでその収益が伸びた。下期も「アナと雪の女王2」がひかえており、投資家の期待を集めている。
自社配給ではないが...シネコン好調で業績潤う
「天気の子」は10月中旬時点で興行収入が133億円を突破。同じ新海誠監督による2016年の歴代4位の超ド級ヒット作「君の名は。」(250億円)には及ばないものの、調査会社によると1982年公開の「E.T.」(135億円)を抜いて国内歴代13位に位置するというメガヒットとなった。「天気の子」を配給した東宝は2019年8月期連結中間決算の売上高、純利益がともに過去最高を更新。2020年2月期通期の純利益も10月15日に上方修正し、2年ぶりに過去最高を更新する見込みだ。
松竹にとっては自社配給作品ではないものの、メガヒットによって系列シネコンが潤うことで業績は改善する。2019年8月中間期には3月7日公開の米ウォルト・ディズニーの実写版映画「アラジン」が興行収入121億円と国内歴代21位にランクするヒットもあり、各地の映画館に客が集まった。
松竹の2019年8月中間連結決算をみると売上高は前年同期比13.5%増の502億円、営業利益は35.7%増の33億円、経常利益は51.0%増の31億円、純利益は50.5%増の20億円といずれもふた桁の増収増益だった。
「アナ雪2」のヒットにも期待
事業別にみると、映画を含む映像関連事業の売上高が前年同期比20.7%増の290億円、セグメント利益は4.4倍の19億円だった。二代目松本白鸚・十代目松本幸四郎襲名披露の全国公演などを行った歌舞伎部門を擁する演劇事業は減益ながら底堅い収益をあげ、利益率が高く大黒柱でもある不動産事業は売上高が2.8%増の53億円、セグメント利益が3.4%増の24億円と堅調だった。
ライバルの東宝にも言えることだが、ヒット作に左右される映画演劇事業を安定した賃料収入が見込める不動産事業が支える経営スタイルとなっている。このためヒットがあり、またヒットを見込める局面では株価も上がりやすい。11月22日に続編が公開されることになった米ウォルト・ディズニーのアニメ映画「アナと雪の女王」(2014年公開)は興行収入255億円と国内歴代3位の化け物だけに、続編への期待は高い。
2019年8月連結中間決算の発表を受けた10月16日の松竹の株価は一時前日終値比8.8%(1280円)高の1万5880円まで上昇し、年初来高値を更新。当日安値が前日高値を上回る「窓をあける」節目のチャート図を描いた。全体の株価が堅調なこともあるが、23日には一時1万6230円を記録、その後も1万6000円前後で推移している。株式市場には消費税率引き上げの影響への懸念や株価の高値警戒感があるものの、さらに強気に買い進まれるとの期待もある。