とはいえ、今後も不透明な状況は続く
他方、この間の事態で中東の地政学リスクは新局面に入ったとの見方もある。サウジの石油施設への攻撃は、わずか2つの施設だけだったのに、サウジ全体の生産量が一気に半減した衝撃は大きい。同様の攻撃の再来でサウジの生産に再び支障が出るようなことがあれば、今回とは比較にならない大きな影響を世界経済に与えかねない。
さらに、今回のサウジへの攻撃は、アラムコの株式公開(IPO)計画にも影を落としている。サウジは年内のIPOに向け、投資家に財務状況などを説明する目論見書を10月中に公表する計画と伝えられる。従来、世界のいくつかの市場に上場し、2兆ドル(216兆円)の資金調達を見込むとされてきたが、今回の攻撃で、期待通りの高値での株式売り出しができるか、疑問視する声が強まっている。事実、英フィナンシャル・タイムズなどは17日、IPOを延期する方針だと報じている。
アラムコ上場による資金はサウジが進める「脱石油依存」の経済構造改革に充てる計画だった。資金調達がうまくいかず、改革が進まないようなら、サウジの国内政治の動揺など、新たな波乱要因を生じかねない。
米・サウジとイランの対立を軸にした中東情勢の不透明感は容易に払拭できず、世界経済の不安要因であり続ける。