攻撃直後は急騰するも...その後は元通り
これだけの事件が続けば、原油相場は跳ね上がっても不思議でないところだが、市場はほとんど荒れていない。アラムコ攻撃直後の9月16日こそ、ニューヨーク原油市場で指標となるテキサス産軽質油WTI先物価格は1バレル=62.90ドルと前日比15%ほど急騰したが、翌日には反落し、その後は少しずつ水準を下げ、ほどなく50ドル台前半に戻した。イランタンカー攻撃でも、55ドルレベルまでしか上がらず、その後も50~55ドルでの小動きが続いている。
この落ち着きは、なぜなのか。もともと市場にとって最大の関心は原油需給で、米国のシェールオイル増産に加え、米中貿易戦争を契機とする世界経済の減速懸念で需給緩和への思惑から相場は弱含み、サウジなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非OPEG産油国は協調減産で価格維持に努めている。サウジ攻撃後、この減産を補うため他国が増産に動いたとの情報が飛び交い、サウジ自身が他国に増産を依頼したとの説も駆け巡ったほど。いずれにせよ、サウジの生産回復で生産過剰になるとの懸念が市場では強いと言われる。
特に、サウジはOPECの盟主だけに、これまでのように協調減産を主導できるか、疑問視する声もある。協調減産は2020年3月までで、この12月のOPEC総会で減産延長を決めないと2020年前半に供給過剰から原油価格が下落するというのが国際的な常識だったが、サウジの減産、生産回復、他国の増産などが絡んで、OPECの合意は難度が高まったといえる。