死去の吾妻ひでおさん、漫画界に大きな影響遺す 「不条理日記」「失踪日記」...悼む声次々

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   「あづま先生!?」「は、はい」「先生ほどの人がなぜこんな......」「な なんつーか描けなくてねー」――漫画執筆を投げ出し、ホームレス生活を続けていた吾妻ひでおさん。とうとう警察に保護されたとき、漫画ファンの警官と交わしたというのが、上記の会話だ。後期の代表作となった、『失踪日記』(2005年)の一節である。

   漫画家・吾妻ひでおさんが2019年10月13日未明、都内の病院で亡くなった。69歳。本人の公式ツイッターで21日午後、発表された。

   お色気ギャグものでのブレークから、SF色の強い作品群でのブーム、失踪・アルコール依存症の日々、そして再起――漫画界からは死去を悼むとともに、その足跡が与えた影響の大きさを讃える声が出ている。

  • 後期の代表作「失踪日記」(イースト・プレス)
    後期の代表作「失踪日記」(イースト・プレス)
  • 後期の代表作「失踪日記」(イースト・プレス)

ギャグ、SF、不条理、ノンフィクション...活躍の場広く

   北海道出身。1969年のデビュー後、「週刊少年チャンピオン」に72年から連載したお色気ギャグものの「ふたりと5人」がヒットするも、編集部主導だったこともあり、本人としては不本意だったという。

   その後、「オリンポスのポロン」「ななこSOS」などがアニメ化される一方、「やけくそ天使」などを経て、複数の雑誌に断続的に発表した「不条理日記」(1978年~)がSFファンの間で話題に。かわいらしいキャラクターとエロティックさ、不条理な展開とギャグ、SF作品などのパロディーなど、独自の作風で支持を集め、新興メディアだった自販機本での作品発表や、コミックマーケット(コミケ)での同人誌刊行などでも注目された。

   しかしその後、漫画執筆から遠ざかり、「気が付くと原稿落としたりうつと不安に襲われたり失踪したり家へ帰ってまた失踪したり配管工したりアル中になったりするのである」(失踪日記より)という長い沈滞期に入る。

   2005年、失踪してのホームレス生活、アルコール依存症での入院の日々などを題材にしたノンフィクション作品として、「失踪日記」(イースト・プレス)を発表する。「異常体験を客観視しつつユーモラスに描いた」(手塚治虫文化賞マンガ大賞での評論家・呉智英さんの選評より)作品は話題を呼び、数々の賞に輝いた。

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