文部科学省所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、映画「宮本から君へ」(2019年9月27日公開)について、内定していた助成金1000万円の不交付を決定したことが分かったことをめぐり、ネット上では批判の声が集まっている。「宮本から君へ」は同名漫画が原作で、18年4~6月にテレビドラマ化された。今回の映画はその続編だ。公式サイトによると、ピエール瀧氏(19年3月に麻薬取締法違反容疑で逮捕、のちに有罪判決)が、主人公の取引先として登場する。
不交付決定の理由について、振興会は「ピエール瀧氏が出演しているということで、国が薬物の使用を容認するようなメッセージを発信する恐れがあるため」と説明。ネット上では、「作品にも罪はない」「こんな前例つくるんか」など批判の声が相次いだ。
「公益性の観点から...」
J-CASTニュースが19年10月21日、振興会基金部の担当者に取材したところによると、助成金の不交付を決めたのは7月上旬。ピエール瀧氏に6月18日、有罪判決が出たのを受けて内部で検討を開始。最終的に7月10日に決定した。
不交付決定を受けて、同会は9月27日付で「芸術文化振興基金助成金交付要綱」も改正。第8条(交付の決定及び通知並びに不正等による交付内定の取消し)に「公益性の観点から助成金の交付内定が不当と認められる場合」などの文言、第17条(助成金の交付決定の取消し)に「公益性の観点から助成金の交付が不適当と認められる場合」などの文言を加えている。
「『公益性』という文言はあいまいでは」という記者の指摘に対し、担当者は助成金対象活動の「募集案内」に今回新たに加えた
「また、助成対象団体が団体として重大な違法行為を行った場合や、助成対象活動に出演するキャスト又は制作に関わるスタッフ等が犯罪などの重大な違法行為を行った場合には、『公益性の観点』から助成金の交付内定や交付決定の取消しを行うことがあります」
という文言を紹介。「こういったことを想定しています」と説明する。
不交付については、10月18日から19日にかけて、東京新聞や読売新聞などが、相次いで報じた。これらの報道をきっかけに、ネット上では振興会に対する批判が次々と寄せられた。
ダイノジ・大谷さん「なんか恐怖すら感じさせる理由ですね」
著名人らからも相次いで、疑問の声が上がっていた。
現代史研究者の辻田真佐憲氏は19日17時ごろ、ツイッターを更新し、「古い時代の映画やレコードなんて、ヒロポン常用者がかなり関わっていたりするんですが......」と主張。お笑いコンビ「ダイノジ」の大谷ノブ彦さんも「国が薬物を容認するようなメッセージを発信する恐れがある」という理由について、「ないと思うんだけどなぁ なんか恐怖すら感じさせる理由ですね」と疑問を呈し、「映画館で観よう」としていた。
署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」では、不交付撤回を求める署名活動が10月19日にごろから始まった。10月21日13時15分ごろの時点で、979人が賛同している。
ネット上で「作品に罪はない」など批判的な声が上がっていることや、署名活動が始まっていることに対し、基金部の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「コメントを差し控える」と答えるに留めた。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)