国内流通業でイオンと並ぶ「2強」であるセブン&アイ・ホールディングスが打ち出したリストラ策が、波紋を広げている。
2019年10月10日に発表したもので、百貨店の約3割を閉鎖し、総合スーパーの約2割を閉鎖や譲渡の対象とするなど、思い切った内容だ。併せて発表した同8月末までの半年間の連結決算は過去最高益を更新したものの、主力のコンビニ事業は曲がり角を迎えており、かつてグループを牽引した「カリスマ経営者」が残した「負の遺産」の整理を加速させるには待ったなしの状況だった。
イトーヨーカ堂も33店舗を閉鎖or譲渡
百貨店の「そごう・西武」は全15店舗のうち、西武岡崎店(愛知県)、西武大津店(滋賀県)、そごう西神店(兵庫県)、そごう徳島店(徳島県)、そごう川口店(埼玉県)の5店舗を2021年までに閉鎖。西武秋田店(秋田県)と西武福井店(福井県)は売り場を縮小する。総合スーパーの「イトーヨーカ堂」も全158店舗のうち33店舗を閉鎖や譲渡の対象とするが、具体的な店名は明らかにしていない。
百貨店と総合スーパーの苦境はセブン&アイに限った話ではない。アマゾンなどのインターネット通販やユニクロなどの専門店に客を奪われ、百貨店では最大手の三越伊勢丹ホールディングスも店舗を相次いで閉鎖しており、ファミリーマートも傘下にあった総合スーパーのユニーを売却している。
セブン&アイは、そごう神戸店(兵庫県)と西武高槻店(大阪府)を関西が地盤のエイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡。イトーヨーカドー福山店(広島県)は西日本で「ゆめタウン」を展開するイズミに譲渡するなどリストラを進めてきており、こうした動きがさらに加速する。
限界迎えつつある従来の経営手法
もともとセブン&アイのルーツはイトーヨーカ堂であり、そこが始めたコンビニがセブン-イレブンだった。外食のデニーズジャパンを合わせた3社が2005年、持ち株会社のセブン&アイを設立し、そごうと西武百貨店を傘下に置いたミレニアムリテイリングを2006年に完全子会社にしたことで、現在のセブン&アイの企業グループ群が形成された。こうした拡大路線を主導した人物が、日本でセブン-イレブンを立ち上げ、長くセブン&アイのトップに君臨した鈴木敏文氏だった。
業容は拡大したが、構造的な不振に苦しむ百貨店と総合スーパーを好調なコンビニが支える事業構造から抜け出せず、その立て直しが、かねてから経営課題だった。その鈴木氏がセブン&アイの経営から離れた2016年を境にリストラが本格化していたところ、2019年になって、コンビニの24時間営業に対するフランチャイズ加盟店の反発が表面化。また、沖縄県への出店によってセブン-イレブンは全都道府県に店舗網を構えたことになり、新規出店で売り上げを伸ばし続けてきた従来の経営手法も限界を迎えつつある。
今回踏み切るリストラは、セブン-イレブンが頭打ちになる前に不採算の百貨店と総合スーパーを閉鎖する「外科手術」の側面がある。百貨店は首都圏の好立地にある店舗が中心となるが、ネット通販との競合といった構造的な問題は解消されたわけではない。コンビニを日本に定着させたような先進的な一手を打てなければ、いかにセブン&アイといえども規模縮小のスパイラルから抜け出すことは容易ではない。