八ッ場ダムのおかげで「利根川が助かった」は本当か 識者らに見解を聞く

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「土地利用のことを考えず、ダムの効用だけで議論してはだめ」

   一方、高橋教授は、「土地利用のことを考えず、ダムの効用だけで議論してはだめ」と語る。

「以前であれば、八ッ場ダムみたいなものはなくても大丈夫だった。関東平野に水田が広がっていて、水田そのものに10センチ水がたまれば、八ッ場ダムの水ぐらい簡単にクリアできる。ところが、水田やため池がどんどんなくなっていき住宅地がどんどんできていった」

とした上で、2つの問題点を挙げた。「1つは水田にためていた、あるいはため池にためていた水がためられなくなった。もう1つは、そこに盛り土をして家を建てているから、非常に危険なところに家がたくさん建っているということ」。

   高橋氏は、「本来人が住むべきでないところに、たくさん住宅ができており、見渡す限り住宅になっている。本来だったら水をためられた水田がなくなってしまい、危ないところにどんどん家が建っている。その2つの意味で危険性が増していた」と言及。「下流の方の渡良瀬遊水地もデッドラインに達している。極端にいうと、コップ1杯の水でも増えれば堤防を水が越えてしまうかもしれない状況で、荒川や江戸川が氾濫しなかった、墨田川も氾濫しなかった点、八ッ場ダムが果たした役割は評価してもいいんじゃないか」としつつ、「トータル」な視点で、物事をみる大切さにも言及。

「土地利用の仕方や雨の降り方なども考慮に入れないと。サイエンスとして洪水や災害を捉えようとした場合、人間の土地利用の在り方が大事なんですね。そこにどれだけの人口密度があるか。それを考えないで、ダムの効用を議論するのは意味がないことだと思う」
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