ゲノム編集食品を新聞社説はどう書いた 懸念か、イノベーションか、それとも...

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産経は暗に消費者団体を批判

   読売は4月の社説では「消費者が、ゲノム編集食品と認識した上で購入できるよう、適切な食品表示が欠かせない」と、事実上、表示義務化を求めていたが、義務化せずと決まった後の9月27日には「事業者には、ゲノム編集であることを食品に表示した上で、できる限り丁寧な説明をホームページなどで行う努力が望まれる」と、業者の自主性に任せる政府方針の容認に転じた。

   産経の主張(社説に相当、10月4日)は、既存の品種改良との区別が困難との政府の説明を受け、「ふさぐことのできない抜け穴がある規則は、不正や混乱の原因となる。知る権利や選ぶ権利をかえって阻害することにもなりかねない」と、他紙とは大きく異なる主張を展開。様々な危険を懸念する声への反論を連ね、「『知る権利』『選ぶ権利』を要求する側にも、過剰な不安や間違った認識が持たれないよう、情報発信には配慮が求められよう」と、消費者団体などを暗に批判しているのは、産経ならではだろう。

   産業としての育成に関しては、「効率のいい新種改良を可能にするゲノム編集技術は、国内はもちろん世界の農林水産業を大きく変える可能性を秘める」(朝日9月)という期待がある。政府も、2018年に閣議決定した科学技術の革新をめざす「統合イノベーション戦略」で、同年度内にゲノム編集食品の法的な位置付けを年度内に明らかにする方針を示していた。厚労省の3月の方針は、これに沿ったもので、日経(3月20日)が「米欧に先んじてルールを明確にするのは、迅速な流通を後押しするものといえよう」と評価したのは、経済紙らしさ。

   これに対し、毎日(3月)は「『結論ありき』になってしまったのではないか。もっと腰を落ち着けて検討すべき課題だ」、東京も「スケジュールありきで性急に示された結論に、消費者団体などからは『安全性の議論が足りない』との声が上がっている」と批判。読売(4月)も「『統合イノベーション戦略』の中で、幅広い分野でのゲノム編集技術の活用を目指している。社会の理解なしに、容易には普及しないと心得てもらいたい」と、政府にくぎを刺していたのが目立った。

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