「大戸屋ごはん処」と言えば、チェーン展開する定食店の先駆けのような存在だ。2019年3月末の店舗数は直営とフランチャイズを合わせて国内353店、海外110店を数える。これらを展開する大戸屋ホールディングス(HD)が今、激震に襲われている。役員人事などを巡って対立したことがある創業家が持ち株を外食大手のコロワイドに売却したからだ。コロワイドは2019年10月1日、発行済み株式の18.67%を握って筆頭株主に躍り出た。
大戸屋HDは三森久実氏が1983年に設立。事実上の創業者であり、一代で外食チェーンを築いたが、会長だった2015年に57歳の若さで亡くなった。これがきっかけとなり、窪田健一社長と久実氏の長男で常務だった智仁氏との対立が表面化。一時は内紛状態にもなり、智仁氏が16年に取締役を辞任して会社を去る一方、会社は17年に久実氏の功労金として2億円を支払うことで、歩み寄ったようにも見えていた。
妻らがコロワイドに売却
ところが2019年10月1日付で、久実氏から株を相続して筆頭株主になっていた妻三枝子氏が発行済み株式の13.07%をコロワイドに売却し、第2位株主だった智仁氏も同5.60%を売却した。両氏は持ち株のほぼ全てを譲渡したことになる。一方、株式取得の目的について、コロワイドは「大戸屋HDとの友好的協議を通じて、当社グループが有する事業プラットフォームの活用等により大戸屋HDが営む外食事業の発展に寄与し、双方の企業価値向上を実現する」と開示している。
だが、これを額面通りに受け取る外食関係者は少ない。コロワイドは居酒屋「甘太郎」で事業を興し、回転寿司「かっぱ寿司」、焼き肉店「牛角」の運営会社などを買収して規模を急拡大させてきた。連結売上高は2400億円に達しており、250億円の大戸屋HDをはるかにしのぐ。報道によると、大戸屋HDに対して事前に創業家側とコロワイド側からそれぞれ株式譲渡の連絡はあったが、協議の場はなかったという。コロワイドは追加で株式を取得する可能性も示唆しており、大戸屋HDの経営への影響力をさらに強めてくる可能性も十分にある。