マンション住人は協力を深めている
家族と相談し、ひとまず妻の両親のもとへ一時避難を決めた。部屋のブレーカーを落とし、戸締りを確認して玄関を出た。マンションの高層階に住むため、エレベーターを使わず階段で1階まで降りるのは難儀だ。しかも階段は暗い。懐中電灯を照らし、途中行きかう住人と言葉を交わしながら、ゆっくりと下りた。額に汗がにじみ、運動不足の足はこわばった。
外に出ると、電車はほぼ通常運行に戻っている。周りの商店の多くは台風の影響を受けつつも既に開店していた。都心に出てきたら、電気にも水にも不自由しない普段の暮らしだ。
1か月ほど前の台風15号で、千葉県の多くの自治体が長期間の停電、断水に見舞われたのは記憶に新しい。記者が取材したなかで、勤務先の都心では電気のある「いつも通り」の生活なのに、自宅に帰ってくると真っ暗、信号すら消えている、そのギャップにやり切れなさを感じるという話が印象に残った。記者の場合は身を寄せる場所があり恵まれているが、この話がとても身に染みた。
停電と断水のダブルパンチに、マンション住人は協力を深めている。停電から数時間後にはSNSでの連絡体制が整備され、刻々と変わる現状のシェアが可能となった。前夜、建物への水の流入を避けるために大勢の有志が集まり、必死で作業した。こうした姿勢は、お互いの不安や孤立感を打ち消してくれるはずだ。
台風19号では、記者の立場とは比べ物にならないほどの大きな被害を受けた地域、人が多い。早期の復旧を祈るばかりだ。
(J-CASTニュース編集部 荻 仁)