新興国でも開発進むが、日本は「足踏み」
リブラの脅威に触発され、米中両国で高まるデジタル通貨への関心。ある意味では、デジタル通貨を切り口に、「通貨戦争」が勃発する一歩手前まで来ているとも言えるだろう。そんな経済大国の闘争状態を尻目に、新興国では、金融の安定化を図るための手段としてデジタル通貨をつくろうとする取り組みが進む。
南米ウルグアイでは、中央銀行が2017年11月、ブロックチェーン技術を活用した法定デジタル通貨の試験運用を世界に先駆けて始めた。試験プログラムは18年4月に終え、中央銀行は、さらなる試験と発行の可能性について検討しているという。
その他の新興国では、カリブ海に位置するバハマの財務相がことし4月、島国の特性に基づく現金移動の困難さなどを克服するため、2020年にもデジタル通貨を導入することを表明。東アフリカのルワンダも、2ヶ月前に取引の効率化や経済成長促進を狙いに独自のデジタル通貨を発行することを明らかにしている。
世界各国の中央銀行でつくる国際決済銀行(BIS)が19年1月に公表したレポートによれば、回答した63行のうち7割がデジタル通貨に関する調査を進めており、デジタル通貨が世界規模で広がっていくのは想像に難くない。
一方、BIS加盟国の日本は、デジタル通貨発行に後ろ向き。日本銀行の雨宮正佳副総裁は7月時点で、デジタル通貨を発行する予定はなく、調査研究も今後行うという意向にとどまっている。当然、日本も他国や、リブラのような経済的脅威に対し、何らかの措置が求められるのは必至だが、日本円が安定し現金への信用度が高い以上、デジタル通貨に価値を見出しにくい。現在行われている消費税ポイント還元ではないが、デジタル通貨の使用によるインセンティブなどがないと、実導入に難航する可能性が高そうだ。
(ライター 小村海)