「村上春樹さん、ノーベル文学賞を逃し『14度目の正直』はならず」――2019年のノーベル文学賞発表を受け、スポーツ報知(ウェブ版)はこんな見出しで報じた。
もう10年以上にわたって繰り広げられる、この季節の「村上さん受賞逃す」「ファン落胆」報道。ツイッターには「取れなかったニュース、もうお腹いっぱい」とメディアにあきれる声から、「毎年話題にされる村上春樹、可哀想だな」と本人に同情する意見も。今回の各メディアの報道ぶりについて、ウェブ版記事(見出し)を中心にまとめてみると、濃淡が見受けられた。
「ファンからため息」「春樹ファン落胆」
日本時間の10月10日夜、2018年と19年の2年分のノーベル文学賞が発表された。18年はポーランドのオルガ・トカルチュク氏、19年がオーストリアのペーター・ハントケ氏だった。
翌11日朝までの各メディア報道(ウェブ版、見出し)をみると例えば、先にもふれたようにスポーツ報知が「村上春樹さん、ノーベル文学賞を逃し『14度目の正直』はならず」と報じている。記事では「村上さんは、06年に過去に多数のノーベル賞作家が受賞したフランツ・カフカ賞に選ばれて以降、ブックメーカーなどで本命の一人に挙げられてきたが(略)」と、06年から数えて「14度目の正直」の説明をしている。スポーツ紙では他にも、「村上春樹氏ノーベル文学賞逃す 高校同級生もため息」(日刊スポーツ)などが見つかる。
新聞大手の配信ニュースで、村上さんファンの反応を見出しにとって報じたのは、
「日本人受賞かなわず 村上春樹氏ファンからため息 (略)」(毎日新聞)
「『残念』春樹ファン落胆 ノーベル賞、来年に期待」(産経ニュース、いずれも10日)
の2紙だった。もっとも、読売新聞オンラインでは、関係しそうな「国内」や「エンタメ・文化」欄などの過去記事一覧では見当たらず、サイト内検索欄で調べても出てこなかったが、村上さんの子供・青年時代のゆかりの地、兵庫県版のページには
「春樹ファン ため息」(11日朝)
と、「読者会員限定」記事が見つかった。
朝日新聞デジタルでは、発表(日本時間10日20時から)前の15時30分頃に
「『ハルキスト』の悲願かなうか? 文学賞見守り、今年も」(有料記事)
の記事を配信したが、結果が出たあとの落胆ぶりなどを伝える記事は見つからなかった。兵庫県版ページでも見当たらなかった。
日本経済新聞の電子版は「欧州の2氏にノーベル文学賞 村上氏は受賞ならず」と、見出しに村上氏の名前をだして伝えた。
「もっと静かに見守れんもんか?」
通信社では、共同通信「『残念』 春樹ファン落胆 ノーベル文学賞、来年に期待」、時事通信「春樹ファン、落胆=ノーベル賞『来年こそは』」と、ファンの反応記事を配信していた。
テレビのキー局サイトで春樹ファン反応に焦点をあてた記事を流したのは、フジテレビ系「FNN PRIME」。11日未明に「ノーベル文学賞にヨーロッパの2人村上春樹ファン『来年こそ』」と伝えた。
他には「ノーベル文学賞 日本人受賞ならず」(日本テレビ)、「ノーベル文学賞、2年分発表で日本人受賞ならず」(テレビ朝日)と、見出しで「日本人」に触れたのが2局。TBSとNHKの記事の見出しには、「村上春樹」も「日本人」も登場していなかった。NHKの続報では、「ノーベル文学賞受賞者2人の著書が書店に並ぶ 東京 新宿」の見出し記事の本文で、村上氏の受賞を期待していたという「47歳の会社員の男性」が登場し、村上さんが受賞を逃し「残念」だが、今回の受賞者の作品を「これをきっかけに読んでみたいです」と話した様子を伝えていた。
以上のように、各メディアにより濃淡のある報道ぶりではあったが、全体的な報道のイメージとして、メディアは依然として「村上さん受賞逃す」「ファン落胆」報道を続けている、と受け止める人も多いようで、ツイッターには
「村上春樹がノーベル文学賞取れなかったってニュース、もうお腹いっぱい」
「いつまでノーベル文学賞 村上春樹って言ってんだ?」
といった声が相次いでいた。村上氏に同情的な人もおり、
「ノーベル文学賞のたびにがっかりされて大変だろうな」
「毎年(略)取れなかったって話題にされる村上春樹、可哀想だな、とか思う」
という意見もあった。
「もっと静かに見守れんもんか?」
と問題提起するツイートもあった。