国際交流基金は「被災者傷つける懸念」と出品拒絶
チンポムの公式サイトなどによると、この10分ほどの映像作品は、震災2か月後の2011年5月、福島県相馬市内の港で撮影された。メンバーのうち4人が、自ら復興作業に携わる被災者の若者6人とともに円陣を組んだという。公式サイトでは、「彼らによるリアルな叫びは、すべてアドリブ、一発撮りで収録された」と説明している。
この作品は、不自由展のコンセプト通り、公的な展示会に出品できなかった過去がある。バングラデシュで14年にあった「アジアン・アート・ビエンナーレ」でのことで、不自由展のサイトでは、「主催者の国際交流基金よりNGか?出た」と紹介している。
国際交流基金は10月9日、J-CASTニュースの取材に対し、「組織として、NGワードは決めていませんが、公的機関ですので、被災された方の気持ちを傷つけたり不快にさせたりする懸念からお断りすることもあります。当時、そういう判断があったのではないかと思います」(コミュニケーションセンター)と答えた。
ツイッター上では、今回の作品について、中年の男性が東北の人たちをからかい、日本人を貶めるものだとまくしたてる動画が10月8日に投稿された。それが反響を呼び、「いいね」が1万件以上も付いている。
こうした投稿をきっかけに、ネット掲示板などでも論議になり、「被曝まで揶揄しだしたか」「苦しんでる人もまだいるのに」「本当に芸術なんですか?」などと作品への疑問や批判が相次いでいる。
一方、美術関係者らからは、作品への擁護の声が出ており、美術家の会田誠さんは、ツイッターで作品の経緯を紹介したうえで、「順番に叫ぶ言葉は自由、とっさのアドリブ。その中で地元の若者は自虐自嘲的なことも、アイロニカルなことも叫んだ」との見方を示した。
あいちトリエンナーレ芸術監督のジャーナリスト津田大介さんは9日、動画の中年男性は会場に入った人ではないとツイッターで指摘したうえで、「『原発事故の被害者が、自身の不安を断ち切るための叫び』という作品の文脈を、悪意ある解釈と事実誤認に基づき拡散している」と書いている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)