LGBT(性的少数者)や発達障害に対し、「差別的発言」をしている内容が記載されているとして、ある本に批判が集まっている。注目されている理由は、その著者として、グローバル教育に力を入れている、著名な学園の園長名が記載されているからだ。同姓同名の別人ではなく、「表紙」にはその学園名も挙げている。
これに対し学園側の広報部担当者は2019年10月8日、J-CASTニュースの取材に「学園長は(こんな本は)書いていない。事実無根のフェイク」と否定している。
出版社や発行元の記載はなし
問題となっている本は、『LGBT~言論を破壊するもの~』(表紙表記。アマゾンサイトでは後段の表記は「言論を破壊するものたち」)。J-CASTニュースが調べた範囲では、アマゾンで売られているのは確認できたが、それ以外で売られているかどうかは確認できなかった。フォーマットはKindle版。「著者」は、関東地区の著名学園の学園長だとしている。本では学園名も園長名も明示している。出版社や発行元の記載はない。発売日は9月10日で言語は日本語。
この学園は、グローバル教育に力を入れている学校として知られている。学園長には、これまでに何冊かの著書もある。
J-CASTニュース記者がこの本を購入(270円)してみたところ、著者紹介欄では、やはり学園名も明示したうえで、学園長の名前が紹介されている。本文では、LGBTなどに対する見解が書かれており、「誤った道」「病気である」などと書かれている。
こうした本の内容をめぐり、ツイッター上では「差別発言」「教育者が書いた本としてどうなんだ」など批判の声が寄せられている。
「大変迷惑している」
学園側広報部の担当者は10月8日、J-CASTニュースの取材に対し、「大変迷惑している。どこからどう出たのか知りたい」と困惑。アマゾンへの対応も検討しているという。
学園長が代表理事を務める財団も8日、「お知らせ」をウェブサイト上で発表。代表理事の名前を「勝手に使用」し、全く関与していない本を本人の著書とする「極めて悪質な行為が確認されました」と言及。「この行為は明らかに犯罪行為であり、弊所はすでに捜査当局に相談しています。今後、当局の厳正な捜査を見守っていきたいと思います。また、悪意ある拡散をしているインターネット上の書き込みに関しましても司法上の手続きを進めてまいります」としていた。
J-CASTニュースが、アマゾンサイトで「販売」業者として表示されている「アマゾンジャパン合同会社」の電話番号にかけると、カスタマーサービスにつながった。「その他のお問い合わせ」から問い合わせると、電話に出た担当者は、「お客様専用窓口なので、取材の担当部署にはつなげられない」などと対応するのみだった。
また、アマゾンジャパンの広報に対しても、「学園長が書いていないという本が出されたことにどのような対応をしていくのか、一般論として身元を偽って出された本が載ってしまった場合、どのような対処を今後していくのか」などと取材を申し込んでいる。同社から回答があり次第、追記する。
(8日夕追記)アマゾンジャパンの広報からは「お問い合わせいただいたコンテンツは、既に削除されています。Amazonは不正行為を容認いたしません。不正行為が発覚した場合は、厳正に調査を行ったうえで、確固たる措置を講じています」と回答があった。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)