アスリートの体の負荷軽減につながる製品などをビジネスシーンにも普及させようと、スポーツ用品メーカーが販売戦略を強化している。
革靴メーカーとスポーツ用品メーカーの大型コラボレーションをはじめ、著名人らとタイアップしたキャンペーンなどを展開し、各社は新市場の開拓を目指す。
仕事にもなじむ「シンプルなデザイン」PR
矢野経済研究所(東京都中野区)が9月30日発表した「スポーツシューズ市場に関する調査」によると、2019年のスポーツシューズ国内市場規模(メーカー出荷ベース)は、数量ベースで前年比2.2%増の1億734万足となることがわかった。金額ベースでは同2.7%の4326億円で推移する見込みで、市場は活況を呈している。
そうした中、ニューバランスジャパン(同千代田区)は、ビジネスシーンでのスニーカー利用を広めようと、著名人らとタイアップしたキャンペーンを始めた。新たに公開したホームページ「働くと、ニューバランス」では、芸人・IT企業役員の厚切りジェイソン氏や猿田彦珈琲(同渋谷区)の大塚朝之社長らがスニーカーを仕事のシーンに取り入れる理由などを紹介。歩きやすさや、日々の仕事のシーンにもなじむシンプルなデザインなどをアピールしている。
TENTIAL(同渋谷区)は、プロアスリートが使うインソール(中敷き)「TENTIAL ZERO」をビジネスパーソン向けに拡販する。同製品は足の甲の外側に存在する立方骨を中心に足の骨格を整えることで、足の内側部の運動性と外側部の安定を実現。靴の中に敷くと、無意識のうちに美しい姿勢を維持することにつながり、より快適で疲れにくくなるという。
同社は100人以上のプロアスリートへの販売実績があるTENTIAL ZEROを、今後は営業マンや看護師など足に負担がかかる人向けに販売を強化する。担当者は「販路の開拓、企業との事業提携をしていきたい」と意欲的だ。
「新たな商機とできるか注目」
業界では、革靴メーカーのマドラス(愛知県名古屋市)がスポーツ用品メーカーのミズノと初めてコラボレーションしたビジネスシーン向けのウォーキングシューズを3月に投入。従来、中心顧客だった中高年層のカジュアルスニーカーの着用増加や、人口減少により縮小するウォーキングシューズ市場に一石を投じた。
矢野経済研究所は「スポーツシューズ市場はビジネスパーソンを新たな顧客として開拓できる土壌ができあがった。これを新たな商機とできるか注目したい」と、さらなる市場拡大に関心を寄せる。