スズキ株価とインドの風 法人減税の効果は大きい?限定的?

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   インド政府が法人実効税率を引き下げたことが好感され、スズキの株価が一時2か月半ぶりの高値をつける一幕があった。

   ただ、足元のインド市場は停滞しており、減税の業績改善効果は限られるとの見方もある。

  • スズキの次の一手は?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)
    スズキの次の一手は?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)
  • スズキの次の一手は?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)

インドの新車販売は停滞

   2019年9月の2回目の連休明け24日に一時前週末終値比5.3%(237円)高の4702円まで上昇した。7月10日以来、2か月半ぶりの高値で、前週末9月20日にインド政府が法人実効税率を5%程度引き下げて約20%にすると発表したことを受け、「インド銘柄」のスズキの株価を押し上げた。

   スズキは議決権ベースで約56%を出資する子会社「マルチ・スズキ」を通じてインド事業を展開している。1970年代末にいち早くインド市場の将来性を確信したスズキの鈴木修・現会長が、技術供与相手を探していたインド政府との交渉に臨み、81年に設立した合弁会社がマルチ・スズキだ。その頃に比べるべくもなく成長したインドの新車市場でマルチ・スズキは50%程度のシェアを保有し「1強」の立場にある。スズキにとっては日本と並ぶ主力市場という位置づけだ。

   インドの新車販売台数は2018年度に前年度比6%増の438万4563台。同時期に1%増の525万9587台だった日本市場を射程にとらえる世界4位の規模だ。インドは2017年(暦年)に前年比10%増の401万台と初めて400万台を突破し、400万台をやや切る水準にあるドイツ市場を抜いて4位に躍り出ていた。

   ただ、足元でインドの新車販売は停滞している。2018年11月以降、前年同月比でマイナスが続いており、スズキの業績にも暗い影を落としている、というのが最近のトピックだった。安全性への配慮から購入時の車両保険の加入義務付け期間が1年から3年に拡大されて消費者の負担が増えたことやインド経済自体の低迷、また20年4月から新たな排ガス規制が導入されることが消費者心理の冷え込みにつながっている。排ガス規制はこれに適合する新車が少ないことから、消費者が買い控えしているとされる。

トヨタとの資本提携

   スズキが8月5日に発表した2019年4~6月期連結決算をみると、売上高は前年同期比8.1%減の9075億円、営業利益は46.2%の626億円と確かにふるわない。所在地別でみるとインドを含むアジアは売上高が13.2%減の4312億円、営業利益が59.0%減の219億円と落ち込んでいる。昨18年に不正が発覚した完成検査問題を受け、検査を徹底しているため生産ペースが落ちている日本も売上高が6.5%減の5090億円、営業利益は48.6%減の260億円だったが、それを上回るペースでインド事業の業績が悪化している。

   こうした事情からスズキの株価は過去1年間、6000円台から下落基調をたどっていた。ここへきて戻り基調のきっかけとなったのは何と言っても8月28日に発表されたトヨタ自動車との資本提携だ。トヨタが960億円を出資してスズキ株の約5%を持ち、スズキもトヨタに0.2%程度を出資する。業務提携だった従来の関係から一歩進んだことでスズキ株の安心感が醸成されたのは間違いない。そうした下地があったところでインドの法人減税などに投資家が反応しているのが現状だ。

   ただ、10%近い高成長を続けてきたインド市場のブレーキのかかり方は深刻で、「減税で利益をカバーできるレベルではない」との見方もある。株価も4700円に乗せた後は4400~4600円台の一進一退の動きになっており、インド発の情報の株価浮揚効果も限定的となる可能性がある。

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