「14106(愛してる)」「0906(遅れる)」「310216(喫茶店=サテンにいる)」――無線呼び出しサービス、いわゆる「ポケットベル(ポケベル)」が、最後まで提供していた東京テレメッセージ(東京都港区)のサービス終了により、2019年9月30日、その歴史を終える。
その全盛期だった1990年代、盛んに使われたのが上に挙げたような「ポケベル語」だ。数字などの語呂合わせを元にしたもので、当時は専門のマニュアル本も作られ、ベストセラーにもなった。当時の書籍や新聞記事などから、その流行を振り返ってみよう。
あなたはいくつわかりますか?
さっそくだが、広まり始めたころの新聞記事(朝日新聞1994年4月3日付朝刊)の「ポケベル語クイズ」から、いくつかピックアップする。あなたはいくつわかるだろうか?
(1)39219
(2)11110-16
(3)11007
(4)84541016
(5)5731
正解は、(1)先に行く(2)いい人、いる?(3)いい女(4)ハシゴしている=2軒目の店にいる(5)ごめんなさい、だ。法則性に慣れないとなかなか難しいが、実のところこれらは初歩の初歩である。最盛期には、さらに複雑な新語が次々誕生する(記事後半で紹介)。
こうしたポケベル語はどのように生まれ、どう使われ、そしてどうして消えてしまったのか。その歴史を振り返るには、ポケベルそのものの歩みを少しひも解く必要がある。
日本でポケベルのサービスが始まったのは、1968年のことだ。当初はその名の通り、着信しても電子音が鳴るだけ。外出の多いビジネスパーソンなどが、その主な利用者だった。
1980年代後半に入ると、利用料金も下がり、ユーザー層が広がり始める。またこの時期から、今「ポケベル」と言われて多くの人が連想する、数字などを表示できる商品が登場した。とはいえ、これらはあくまで電話番号などの通知を想定したもので、「ポケベル語」が生まれるまではなお5年ほどの時間がかかる。