ノーサイドのホイッスルが、鳴った。
言葉が、出なかった。覗いていたカメラのファインダーが、ボケて見えなかった。涙が、出た。
19-12。
2019年9月28日(静岡県・エコパスタジアム)、ラグビー日本代表(世界ランク9位)が、アイルランド代表(同2位)を撃破した瞬間だった。
2015W杯「南ア戦」勝利とは、意味合いが違う
この勝利を、一般紙、スポーツ紙各紙が1面で大きく取り上げ、またテレビでも大々的に報じられた。見出しには「大金星」という言葉も踊ったが、長年、ラグビーに携わってきた記者としては、少々、違う気がする。
前回大会の2015W杯。日本は初戦で、南アフリカ(当時、世界ランク3位)と戦った。日本はノーサイド寸前で劇的なトライを奪い、格上の南アに勝利した。この時は、世界中のメディアが「世紀の番狂わせ」「歴史的大事件」「大金星」と報じた。
確かに、当時の南アには「日本ごとき楽勝だ」という慢心があったのだろうし、ノーサイド寸前で試合をひっくり返したことは、日本代表の「大金星」だった。
しかし、今回のアイルランド戦は、意味合いが、まったく違う。相手も万全の準備で、日本戦へと挑んできた。過去の対戦成績は「0勝9敗」。その壁は「これまで」は、高かった。
「世界一」の練習量で80分間戦い抜いた
だが日本代表は、激しいダブルタックル(足元とボールに絡む2人がかりのタックル)を80分間、完遂した。ボール支配率も相手を上回り、パスやキックで相手を「前後左右」に揺さぶりまくった。
これが実現できたのは「世界一」と言われる練習量からだ。走り込みによるスタミナ、筋力トレーニングによるフィットネス。何より、長期にわたる合宿で、意思統一を図り、文字通り、日本が掲げる「ワンチーム」となれたことだ。
つまり「金星」ではなく「勝つべくして取った勝利」と言っていい。ハードワークとコミュニケーション力から、アイルランドをねじ伏せた。
試合後のインタビューでも、選手たちは皆、口々に「勝てると信じていた」と話している。「予選プールA」最大の難敵だったアイルランドに勝ったことで、日本代表が目標とする「ベスト8」以上に、大きく近づいたのは間違いない。
日本のラグビーは、世界のトップに大きく近づいてきている。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)