敬語は気楽――? コミュニケーションを苦手とするユーザーがツイッターに投稿した「敬語」についての心の声が、共感を集めている。
話し相手に「敬語でなくていい」と言われてもリラックスできることには必ずしもならないそうで、「敬語を封じられると詰む」とまでいう。ツイッター上では「これはわかります」「無難で楽なんだよな」との声が広がったが、なぜ敬語にこうした安心感を抱くのか。専門家は「嫌われたくない、変だと思われたくない気持ちが強いのはないでしょうか」と見解を示す。
「1番恐れるのが『敬語使わなくていいですよ』と言われる事」
発端はあるツイッターユーザーが2019年9月26日、
「コミュ障がオフ/飲み会/接待で1番恐れるのが『敬語使わなくていいですよ』と言われる事」
とつづったこと。「言ってる側は『楽に構えて下さい』という100%の善意なんだけど」と相手の気配りであることは理解しているものの、
「コミュ障は往々にして『言葉遣いや距離感を調整し続ける事が苦手な故に、敬語という無難な定型を選んでる』ので、敬語封じられると詰むというな」
と敬語にかなりの「信頼」を置いている。
「コミュ障」はコミュニケーションが苦手であることを示すネットスラングとして使われる。敬語に対するこうした心理は共感を集めており、
「これはわかります。私もあまりタメ口を上手く使えません」
「分かる、敬語が一番無難で安心出来るんよね 何なら歳下相手でも使うし」
「そう!別に敬語にしなきゃと思ってるというよりかは敬語が無難で楽なんだよなー」
「これもうわかりすぎて首折れそう。敬語封じられたらなんかもうそれ以上何もお話出来ませんよって言う」
といった声が続々。元の投稿は1万7000件以上の「いいね」がついた。
人付き合いに対する「煩わしさ」が背景に?
敬語は主に改まった相手・シーンで使うものだが、それがくだけた「タメ口」よりも楽だと思うのは、いったいどんな理由があるのか。コミュニケーション研修事業を手がける「話し方研究所」(本社・東京都中央区)の福田賢司代表(47)は27日、J-CASTニュースの取材に、「嫌われたくない、変だと思われたくない気持ちが強いのはないでしょうか」とし、次のように見解を示す。
「『丁寧である』という他者評価を手に入れるだけで十分で、それ以上仲良くなりたいとも思っていないし、早く帰りたい、という気持ちなのかもしれません。
対人関係において、敬語は相手を敬う表現ですから、初対面の時、ビジネスの場面では当然大切なことだと思います。今回のケースでは、飲み会や接待の場を苦痛だと思っているようなところがあるので、最低限敬語ができていればいいだろう、それ以上踏み込まないでほしいという、コミュ障というよりは人付き合いが嫌いで煩わしいのだと思います」
こうした心理はコミュニケーションを苦手に感じている人のほうが抱きやすいのか。福田氏は「敬語が無難とハッキリ認識している人と、とりあえず敬語でかわしている人、いろいろだと思います。人と関係を深める、仲良くなるのが苦手、という人は、とりあえず敬語を使えばいい、と思っている人も多いでしょう」とするが、一方で
「正しい敬語をしっかり使っているかというと、過剰な敬語を使っていたりして、聞いている側が違和感を持つことも少なくないのです。『~させていただく』の使い過ぎなどもそうです」
と、「とりあえず敬語」には落とし穴があることも指摘した。
コミュニケーションには「相手の思いを汲み取る」ことが必要
「敬語を使わなくていいよ」という申し出は、人によっては戸惑いやプレッシャーに感じる場合も「あるでしょう」という福田氏。ただ、「コミュニケーションは自分1人でするものではなく、必ず相手がいます。となると相手の思いを汲み取ることがコミュニケーションには必要です」として、申し出の意図に関してこう見解を述べる。
「『敬語を使わなくていいよ』というのは、こちらのことを思って言ってくれる言葉です。自分の今のレベルでいいので敬語を使わずに話してみて、苦手であれば『うまく話せなくて申し訳ないんだけど』と断りを入れればいいと思います。そうやって一生懸命話そうとしている人のほうが関係を築きやすいでしょう」
そのうえで福田氏は「せっかくこれからいろいろな友達ができる可能性があるのに、それを閉ざしてしまいかねません。『敬語が楽』という方々も、違うコミュニケーションの方法を持ってみるのもいいのではないでしょうか」と話している。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)