仮想通貨時価総額のランキングで常にベスト3位に入っているリップル(通貨単位:XRP)。もともと法定通貨の国際送金を円滑にする中間通貨として、設計、開発されたが、日本では思いの外、個人投資家などから高い人気を集めている。
その背景にはあるのは一体何なのか――。
人気の背景にSBIなど大企業の支援
752億2200万円。これは、日本仮想通貨交換業協会がことし7月、会員企業の取引所を対象に実施した調査でわかったXRPの現物取引高(7月単月)だ。約7000億円のビットコインに遠く及ばないものの、イーサリアムなどのメジャーアルトコインを差し置いて、第2位につける。2018年12月末調査と同じ順位であり、XRPの日本における人気は不動に近い。
XRPの日本での人気は、一過性のブームのようなものではない。高い処理速度などのハイスペックや、企業からの支持・支援など、明確な理由があるからだ。
とりわけ、手堅い支援を継続しているのはSBIホールディングス(HD)で、同社は、早くから国際送金の革命を目指すリップル社の理念に共鳴し、2016年にパートナーシップを締結。アジアでのXRP普及に向けてSBI Ripple Asiaを設立したほか、リップル社の株式を10%を保有するなど、持続的な支援に努めている。
SBIHDが手掛けるのは、XRPの普及推進だけではない。リップル社の分散型台帳技術「xCurrent」を活用したスマホ用送金アプリ「マネータップ」の開発を、全国25行の銀行の出資を受けて推進。技術面での支援も揺るぎないものとしている。
プロダクトの観点から見れば、XRPの可能性が高いのは間違いない。しかし、そうした面で優れているはどの仮想通貨も一緒。現在も続く投機熱は、過去にも理由がある。
多数の億り人が誕生した「成功体験」も
XRPはカナダ人のウェブ開発者によって考案され、2013~14年頃から世に出始めた。当時の値段は、1.0円未満。通貨の信ぴょう性も、価値も数多にある草コイン(知名度の低い仮想通貨)と相違なかった。
風向きが変わったのは2017年5月。リップル社が、価格の乱高下を防ぐためにロックアップ(編注:仮想通貨を市場に出さずに凍結させ、売買できなくすること)を決めたタイミングだ。
同社は同年12月に総発行枚数の約半分に当たる550億XRPのロックアップを完了した結果、XRPの価格はバブルの勢いにも乗って急騰。17年4月時点で4円ほどだった価格は18年1月に400円台に到達した。100倍に及ぶ暴騰により、大物実業家の与沢翼氏を筆頭に多くの日本人投資家が巨額の富を獲得。この時の成功体験が、現在の"リップル信仰"の元になっているとみなされている。
ただ、XRP、リップル社を巡っては複数の問題と不安要素を抱えており、単なる「信仰」で終わってしまう可能性もある。
すでに指摘があるように、XRPの利用義務があり、「xCurrent」に並ぶ国際送金システム「xRapid」を利用する企業・金融機関は約20社にとどまるほか、法廷闘争が続く「XRPは有価証券か否か」という問題も解消できていないままだ。現段階では、XRPの将来性は断言しづらい。リップル社や、XRPを支持するその他金融機関などが今後、問題解消に努めるとともに、XRPの実需の高さを国際送金などの実務を通じて立証し続けられるかが、重要になってくるだろう。
(ライター 小村海)
(4日追記)記事の一部を加筆・修正いたしました。