消費税率の10%引き上げが迫るなか、日本スーパーマーケット協会や日本チェーンストア協会など小売4団体が連名で、増税対策として実施されるキャッシュレス・ポイント還元事業の抜本的な見直しを求める要望書を菅原一秀経産相宛てに提出した。
要望書が出されたのは、増税の約2週間前。直前になったのは、団体に加盟するスーパーがポイント還元の恩恵を受けるコンビニエンスストアに攻め込まれるのでは、という危機感があるからだ。
競争力低下への危機感
要望書の提出に合わせて、日本スーパーマーケット協会の川野幸夫会長(ヤオコー会長)や日本チェーンストア協会の小浜裕正会長(カスミ会長)らは記者会見を開き、ポイント還元について「日々の買い物に新たな差別と混乱をもたらし、過度な価格引き下げ競争を招く」などと批判した。4団体はこれまでもポイント還元に対して強い憂慮を表明してきたが、今回の要望書には大手コンビニや大半のクレジットカード会社が、ポイントを還元するタイミングについて、後日ではなく、買い物と同時の「実質値引き」で対応する方針を決めたことへの反発が書き連ねてある。
そもそもポイント還元事業とは、国から登録を受けた中小企業の小売店で消費者がキャッシュレス決済によって商品を購入する場合、国費から消費税込み価格の最大5%を消費者に還元する制度だ。消費税増税による消費の手控えを緩和し、中小企業の売り上げを下支えしようと9カ月限定で実施される。ただし、大半がフランチャイズ(FC)で運営されるコンビニにおいては、FC店は中小の小売店に該当するもののポイントの還元は2%となる。大手コンビニの直営店は、政府のポイント還元の対象外だが、コンビニ本部が持ち出しで2%を還元する。
一方、スーパーマーケットはというと、こちらも規模によっては、政府のポイント還元の対象とはならないし、対象となりえる規模の店舗でも、キャッシュレス決済に対応するための設備投資が必要となり、現金しか扱っていない店舗は登録できない。統一したレジシステムを構築している大手コンビニにはどうしても太刀打ちできないスーパーが出てくるため、コンビニに対して競争力が低下してしまう危機感があるのだ。