1年に迫った大統領選への影響
トゥンベリさんは自身で、アスペルガー症候群、注意欠陥・多動性障害、強迫性障害、場面緘黙(かんもく)症と診断されたことを明らかにしている。障がいは自分の「誇り」であり「才能」であると述べ、ツイッターのプロフィールでも、「16 year old climate and environmental activist with Asperger's(アスペルガー症候群の16歳の気候環境活動家)」などと表現している。
怒りを露わにしても、反対派の心を動かすことはできない。環境問題は複雑で、白か黒かではないし、時間もかかる。より包括的で現実的な視野が必要だ。左派や環境ビジネスの広告塔に利用されているだけだ――。
こういった批判もある。が、彼女の率直さ、怒り、攻撃性に抵抗を覚える人がいる一方で、それがあったからこそ、これだけ多くの人に地球温暖化問題を突きつけたのだろう。
米大統領選まであと1年。今回の大きなうねりは選挙戦に影響を与えるのか。それとも一時的な盛り上がりで終わるのか。スウェーデンの16歳の少女に火をつけられた米国での環境問題をめぐる闘いは、まだ始まったばかりだ。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。