国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」での一部展示中止問題で、文化庁は、脅迫などの危険を知りながら申告しなかったなどとして、補助金7800万円を不交付とする異例の発表を行った。
これに対し、芸術祭実行委会長の大村秀章愛知県知事は、訴訟を起こす考えを明らかにした。実際の裁判では、どちらが有利なのか、弁護士に話を聞いた。
官邸の意向か忖度ではないかとの声も出たが...
「うわ......」「ようやるわ」。芸術監督のジャーナリスト津田大介氏は、2019年9月26日に補助金不交付の報道を引用し、ツイッターでこう嘆いた。大村知事も「正直言って驚いた」と報道陣に漏らすなど、文化庁の決定は、関係者に衝撃を与えた。
報道発表によると、補助金を申請した愛知県は、安全を脅かすような重大な事実を知りながら文化庁に申告せず、展示会の実現可能性や事業継続性の2点について、適正な審査ができなかった。こうしたことは、手続き上不適切だったとし、事業全体として補助金が申請されていることから、交付決定について定めた補助金適正化法第6条などに基づいて、「全額不交付」とした。
この決定について、津田氏は、すでに補助金が内示されていたことから、事後検閲に当たらないのかと取材に疑問を語ったと朝日新聞が報じた。また、大村知事も、「合理的な理由がない」と不快感を示し、「裁判で争いたい」と明らかにした。
訴訟では、表現の自由をうたった憲法第21条を争点にしたい考えも示した。中止となった「表現の不自由展・その後」を再開したいと25日に表明した直後だけに、大村知事は、「関連性があるとしか思えない」と不信感を露わにした。
ツイッターでも、著名人らから「政府に都合のいい文化事業にしか補助金が出ない」「自主規制(自己検閲)せざるを得なくなる」と懸念の声が上がった。また、一部大手紙や野党幹部からは、官邸の意向か忖度ではないかと政治的な思惑を指摘する声も出ていた。