校歌歌詞を「式次第に掲載できない」? ネット物議も、JASRAC見解「使えないという指導はしない」

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校歌におけるJASRACとの「契約上のオプション」

   では学校で校歌の歌詞も複製してよいのではないかとも思われるが、この35条についてはJASRACや日本新聞協会、日本雑誌協会、日本レコード協会などからなる「著作権法第35条ガイドライン協議会」が2004年に作ったガイドラインが存在する。JASRAC担当者は次のように説明する。

「著作権者の利益を不当に害することがないよう、複製部数に制限を設けています。条文にある『必要と認められる限度』について、ガイドラインは人数分を限度としています。たとえば必要な生徒・児童が30人なら30枚までとなります。

今回、卒業式や運動会で全校児童の保護者向けの印刷物に、著作物である歌詞を掲載する場合、35条があるといってもガイドラインで著作権の保護が及び、著作権者の許諾を得なくてはいけません。裏を返せば、許諾を得られれば掲載できるということです」

   一方、「校歌」を含む一部の音楽については、作家がJASRACに著作権を預けるにあたって、契約上の「オプション」が存在する。担当者によると以下の3つの方法がある。

(1)作家の著作権をJASRACにすべて預ける
(2)作家の著作権を、校歌の依頼主である学校側にまるごと譲渡する(JASRAC著作権信託契約約款10条)
(3)作家の著作権をJASRACに預けるものの、校歌の依頼主である学校が使用する際は使用料を免除する(留保制限=同11条)

   担当者は、「(2)の『譲渡』を選んだ場合、万一、学校以外の他人が校歌を使いたい場合に許諾を与えることが難しいですし、そもそも学校に自分の権利そのものを渡すことに抵抗がある作家もいるでしょう。そこで、JASRACに預けながら校歌の依頼主である学校には権利行使しなくてよいという(3)の『留保制限』があります」とオプションの背景を明かしたうえで、次のように今回のケースに照らして話す。

「今回の件は『PTAからの連絡』ということですが、学校も関与していて、仮に校歌歌詞の著作権が学校に『譲渡』されている場合はもちろん、『留保制限』されている場合も許諾・使用料は不要になります。

原則、作家はJASRACとの契約にあたって作品の届出をする中で、『譲渡』や『留保制限』を明示することになっており、校歌であればこのどちらかを選んでいるケースは多いです。

ただ各作品が『譲渡』や『留保制限』されているかまでは公表していないので、他人が使いたい場合は使用申請いただいた際にJASRACで確認し、案内しています」
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