「個人的野心を優先」検証委が津田氏糾弾 あいちトリエンナーレ中間報告を読み解く

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   国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」での「少女像」など展示中止を巡り、愛知県の検証委は、芸術監督のジャーナリスト津田大介氏に対し、「個人的野心を優先させた」などとその責任を指摘する中間報告をまとめた。

   これに対し、芸術祭実行委会長の大村秀章知事は厳重注意に留め、津田氏は、辞任は求められなかったとして続投する意向だ。

  • 9月25日の検証委会合であいさつする大村秀章知事(ユーチューブ動画から)
    9月25日の検証委会合であいさつする大村秀章知事(ユーチューブ動画から)
  • 9月25日の検証委会合であいさつする大村秀章知事(ユーチューブ動画から)

不自由展実行委側に自費で便宜供与までしていた

   芸術祭の展示会の1つ「表現の不自由展・その後」は、慰安婦を象徴する「平和の少女像」などにクレームが殺到し、わずか3日間で中止になった。このことを審議してきた「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」(座長・山梨俊夫国立国際美術館長)は2019年9月25日、中間報告をまとめて、26日までに県のサイトにもアップした。

   それによると、津田氏は、不自由展開催に当たって、作品の説明を自らが経営する会社のサーバーに無償で用意し、訴訟となった場合の費用を個人負担する覚書も交わすなど、「公私混同」に当たる不適切行為があった。

   そして、他の展示会のように、作品を選定するキュレーションの専門家を置かず、業務委託した不自由展実行委に選定させるという異例の対応を行った。さらに、不自由展実行委とともに、政治的テーマだから「あえて今回公立美術館で開くことに意義がある」とこだわり、公的機関の役割から逸脱してしまった。

   その結果、「関係各方面に多大な損害を与えるとともにあいちトリエンナーレ及び、愛知県庁に対する県民や協賛企業からの信頼を大きく失わせる事態を招いた」と指摘した。津田氏について、「ジャーナリストとしての個人的野心を芸術監督としての責務より優先させた可能性」があるとして、「学芸業務の最高責任者としてふさわしくない行動や言動、情報発信を行った」と糾弾している。

   ただ、不自由展そのものについては、「情の時代」というテーマに沿っており、「その企画自体が不適切であったとはいえない」とした。

「勇み足もあったが、辞任までは求められなかった」

   その理由としては、「アートの専門家がアートの観点から決定した内容であれ ば、政治的な色彩があったとしても、公立美術館で、あるいは公金を使って行うことは認められる」ことを挙げた。

   このままでは、脅迫に屈した悪しき前例となって他の芸術祭にも悪影響を与えかねないとして、不自由展について、「条件が整い次第、すみやかに再開すべき」だと指摘した。条件とは、脅迫などのリスク回避策を取り、作家の真意が分かるようなガイドツアー方式を採用する、といったことだとしている。

   とはいえ、ネット上では、少女像などの展示自体に難色を示す声が多い。大村知事は9月25日、検証委のあいさつで、条件を整えて不自由展を再開したい意向を示したが、本当に実現するかは未知数だ。

   津田氏については、大村知事は、厳重注意処分にしたことを明らかにし、津田氏も25日の会見で、「勇み足もあった」として、厳粛に受け止める考えを示した。ただ、津田氏は、辞任までは求められなかったとして、10月14日の会期末まで芸術監督を続投する考えを明かした。

   しかし、関係者の間では、津田氏の責任を問う声もあり、芸術監督の相談役的なポジションに当たる企画アドバイザーを辞任した東浩紀氏は、「芸術で政治的問題を問うことと、芸術を政治のイシューにすることは違うんだよね。津田さんは後者を選んでしまった」とツイッターで疑問を呈し、「そろそろ引いたほうがいい」とアドバイスした。

   もっとも、大村知事ら芸術祭実行委側の責任を問う声も多く、不自由展に反対している河村たかし名古屋市長は、「全部、津田さんのせいにしている。一人悪者になるのかね」と報道陣に皮肉を漏らした。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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