数千円の価格の重厚な事典が、「絵師」のツイートをきっかけに拡散されて知名度を上げ、事典としては異例の重版になっているという。
その本は、平凡社の『有職装束大全』(八條忠基さん著)だ。精緻な考証や細密なイラストが、二次創作を描くマンガ家やイラストレーターに「クオリティが凄い」と驚かれている。
創作資料として凄いとバズる
「有職装束大全」は2018年6月に発行。奈良・平安時代から近世に至るまでの公家・武家・神官らの装束や風俗を、豊富なイラストと文章を駆使して解説した本である。およそ1000年間の日本史における装束の変わりようを文様や色合い、装飾品の様式に至るまでフルカラーイラストで丁寧に掲載しており、その分価格は6800円(税抜)と安くはない。
しかし発行から1年以上を経た19年9月21日に、趣味でイラストを描いているいわゆる「絵師」が、「ヤベェ本」「全創作者にオススメ」とツイートし、これが大いに拡散されて平凡社や書店にも問い合わせが相次いだ。
平凡社のツイッターアカウント「平凡社ライブラリー」では9月24日に「重版が決まりました!」「週明けから営業部の電話が鳴りやみません」とツイートし、反響が収まらない様子だ。さらに著者の有職故実研究家・八條忠基さんもツイッターやフェイスブックでお礼と自著の宣伝を始めている。
本書には日本古来の文様・刀剣の様式・色彩とその名前なども収録されており、時代考証のしっかりした創作をしたい絵師たちにとってこれ以上ない資料だと、一気に知名度を上げた。爆発的なベストセラーにはあまり縁がない専門書や事典の界隈はにわかに色めき立っている。