「国民の納得・了解」が背後にあるか否か
公費で問題ないとする論拠として、報告書では国公立大学の講義を持ちだしているが、その背後にある国民の納得・了解という事実を隠しているのは情けない。国公立大学に公費投入が許されているのは、今の制度が変わらないという前提であり、もし国民の納得・了解がなければ、国公立大学も民営化されることもありえるのだ。
すべての公費は議会の承認が必要であり、そのためには国民の納得・了解が必要になってくる。それは、芸術祭への支出においても例外ではない。
こうした公費の大原則について、この中間報告は考慮されておらず、公費支出は当然という立場で書かれているといわざるを得ない。また、この芸術祭については、文化庁は補助金約7800万円全額を交付しない方針であるが、これについて、大村知事は「係争処理委員会で理由を聞く」として、異議を唱えるようだ。愛知県も公金支出は当然としている。
愛知県は、この芸術祭への公金支出について、住民から監査請求があっても拒むだろう。そうなったら、住民訴訟までいくかもしれない。いずれにしても、公金支出は民主主義の基本であるので、国や地方でしっかりと議論する必要がある。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)など。