2019年9月22日、雨の横浜国際総合競技場――。ラグビーW杯、日本代表と同組「プールA」で対戦するアイルランド(世界ランク1位)―スコットランド(同7位)の試合が行われた。結果は、27―3でアイルランドの完勝だった。
アイルランドは4トライを取り、スコットランドはペナルティーゴール(PG)の3点のみ。FW(フォワード)サイドの確実なディフェンスと、ボールポゼッション(保持率)で、アイルランドは、スコットランドにまったく試合をさせなかった。
「ティア」とは大相撲の「番付」的なもの
世界のラグビーでは「ティア(tier)」という言葉が、たびたび使われる。直訳すると「上下に並んだ段、ひな段式座席などの段、層、列」。これは世界ランクだけでなく、過去の実績なども加味される。
例えば、アイルランドは「世界ランク1位」だが、優勝がないので、大相撲でいえば古株の「大関」といった感じだ。ニュージーランド、オーストラリア、イングランド、南アフリカ...といった過去の優勝国は「横綱」である。今回、アイルランドに敗れたスコットランドも、優勝がないので「大関」的なイメージだ。
では、日本(世界ランク10位)はどうかというと「ティア2」。大相撲でいうところの「小結」、「前頭筆頭」といったところだろう。
アイルランドがスコットランドを粉砕した試合をみると、攻撃はパワーで圧倒し、ディフェンスは強固。一週間足らずの9月28日に対戦する日本にとっては、付け入るスキがないようにみえる。しかし、大相撲で「小結」や「前頭筆頭」が、優勝することがあるように勝つ可能性がないわけではない。どうすればいいのか?
勝利のヒントは大相撲「曙―舞の海」の取り組み
大相撲ファンの方ならご存じだろうが、過去、ハワイ出身の「横綱」曙―「小結」舞の海という取り組みがあった。曙は体重200キロ以上、対する舞の海は100キロにも満たなかった。しかし舞の海は「三所攻め」という戦法を取り、スピーディーに相手の懐(ふところ)へと入っていった。結果、曙はのけぞり、土俵を割ってしまった。
日本代表も、体格ではアイルランドには劣る。しかし、「世界一厳しい」と言われる合宿で、スピードやスタミナを鍛え上げてきた。
アイルランドはパワーはあるが、スピードでは日本もひけをとらないだろう。スタミナについてもアイルランドに負けるようなことはない。となると、「完璧」なアイルランドに立ち向かうには、これらの要素を生かすしかなく、おのずと次の3点が重要になってくる。
(1)スピーディーにボールを動かすこと
日本代表は、できるだけ長い時間、ボールを保持し、なおかつ速いテンポでボールを動かし続けなければならない。マラソンと一緒で、相手は必ずくたびれる。そこに付け入るスキが出てくる
(2)ブレイクダウン」の1歩、2歩
ラグビーでタックルした(された)場合、次のプレーヤーがボールを奪いに来る。お互いのボール争奪戦を「ブレイクダウン」と呼ぶが、その際の1歩、2歩が速くなければ、体格の大きい相手に奪われてしまう。ここはスピードの勝負だ
(3)キックは「蹴らされる」のではなく、意図的に「蹴る」こと
今の日本ラグビーは、キックを多用し、「アンストラクチャー」(非構造的な陣形)な状況を作り出して相手を打開していく。しかし、キックは相手にボールを渡すということで「諸刃の剣」でもある。攻められて「蹴らされる」のではなく、意図的に「蹴る」ことが重要になってくる。
日本代表の前に出る1歩、2歩を信じ、目標の「ベスト8」以上を達成するにはスピードとスタミナを生かしたい。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)