トイレの大は「しゃがむ」のが良い? 洋式便器用の「台」も売れ行き好調

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   「排便する際に座るのではなく、しゃがんだ方がいい理由をお教えします」――英BBCニュースの日本語版サイトが動画でこんな情報を発信すると、ツイッターでは大きな反響を呼んだ。

   なかには「足の裏を便座の上に乗っけて、体育座りみたいにしろ...ってこと?」と、「洋式便器でしゃがむ」方法に軽く頭を悩ます声も見受けられた。BBCの映像では、人形を使って説明していたが、「しゃがむ」「35度にひざを上げる」場面では便器が登場せず、イメージが十分に沸かなかった人もいたようだ。過去の研究結果を伝える報道によると、「ひじ」を「ひざ」近くにつけて前傾姿勢にしたり、足置き台を利用したりする方法が紹介されている。

  • 洋式便器用のサポート足置き台の使い方は、こんな感じ(シービージャパン提供のプレスリリースより)
    洋式便器用のサポート足置き台の使い方は、こんな感じ(シービージャパン提供のプレスリリースより)
  • 洋式便器用のサポート足置き台の使い方は、こんな感じ(シービージャパン提供のプレスリリースより)

「90度から35度に ひざをあげると...」

   BBCニュースの日本語版サイトで2019年9月16日、「正しい『うんち』のススメ、あなたは『座る派』?『しゃがむ派』?」のタイトルで記事が配信された。本文部分はごく短く、日本語テロップ付きの映像がメインのコンテンツだ。約1分40秒の動画で、各所に人形を登場させ、胴と太もも部分を約90度にして模型の洋式便器に「普通に」座る場面などが流れる。

   テロップ内容は物語風のまとめ記事で、特定の研究発表の内容を伝えるといった形式ではない。冒頭近くの映像では、便器に「90度」で座る人形と、便器ではなく床状の場所に、いわゆる体育座り風に座る人形が映る。

   「座る派」のマイナス面の説明の際には、細い管を90度に曲げる映像を添えて、「骨盤底筋が結腸を締める」とし、これが「トイレで力む」原因だと指摘。力むことで「痔や失神 脳卒中を引き起こす可能性」につながるとしている。このあたりの解説は、さらっと触れた程度だ。

   さらに、トイレの歴史や水洗トイレの発明などを紹介したあと、「便座に座ることは ヨーロッパ文明の象徴になった」とまとめた。後段では、「あなたが既に便器をお持ちなら簡単な解決策がある」として、

「90度から35度に ひざをあげると すごくいい うんちができる」

と締めくくった。「90度から~」のくだりの映像では、人の手が人形の頭部と足部をそれぞれ持ち、「90度」で座ったような角度から、ひざ部分を胸につきそうなぐらい上に上げていた。「便器」は登場しないため、「35度にひざをあげる」方法や、足と便器との位置関係は、はっきりしない。

専門家に聞いてみると...?

   BBC記事の指摘のように、「ひざを『90度で座る』より上げ」て前傾姿勢を作ることは、排便にプラスに働くのか。NPO法人の日本トイレ研究所(東京都港区)の加藤篤・代表理事にJ-CASTニュースが話をきいた。加藤代表理事によると、前傾姿勢は直腸と肛門の角度がまっすぐに近付くため、前傾姿勢は生理的に排便しやすいポジションだということは、少なくとも関係者の間では知られている話ではある。ただ、人の排便には自律神経が関わっている側面もあるため、それぞれの人が自分で安心できるスタイルで行えばよいという。その上で、

「『Aの方法が正しい』『いやBが正しい』と、一般的に決めつけるものではない」

と指摘した。

   こうした「前傾姿勢」と排便の関係については、過去に研究結果が報告され、メディアも報じている。

   たとえば、米国のクリニックで研究した日本の医師らが「(前傾姿勢が排便によいと指導していたことが)科学的に実証できた」として、海外の医学誌で発表した際には、朝日新聞が2016年2月20日に「『考える人』の姿勢で便秘スッキリ? 熊本の医師が論文」(ウェブ版)と報じるなどしていた。ロダンの「考える人」像で知られる、「ひじ」を「ひざ」付近につけて前傾する姿勢の際の排便機能を調べた研究だ。

   また、「前傾姿勢」をとる具体的な方法については、「便秘を解消するには、洋式トイレに小さい足置き台を用意するとよいようだ」と指摘する記事もある。2018年10月に「Journal of Clinical Gastroenterology」オンライン版に掲載された研究結果をヘルスデーニュース(ヘルスデージャパン)が報じたもので、19年2月15日には、同ニュースの配信を受ける毎日新聞「医療プレミア」サイトも掲載した(有料記事)。

   洋式トイレ用の足置き台についてネットで検索すると、いくつもの商品が登場する。このうち、J-CASTニュースが9月19~20日に連絡を取ることができた数社に話を聞いた。

洋式トイレ用足置き台の販売状況は?

   その名も「ヨークデル」という直球の商品名を企画販売している、生活雑貨メーカー「シービージャパン(CB JAPAN)」(東京都足立区)は、18年8月から販売を始めた。2種類の用途をうたい、「しゃがむスタイルに近い体勢をとることが出来るので、無理に力むことなく自然と力が入ります」と「便秘気味の方」向けと、幼い子供が自分でトイレに座ることができるように補助する「お子様のトイレトレーニング」用に、と訴求している。

   商品は1種類(台の高さは205ミリ)のため、大人用と子供用が分かれている訳ではない。約1年間で予想を上回る約3万個が売れたそうだが、大半の8割方は、「子供向けトレーニング」用にと子供用品関連の店で売れた。残る2割のネット通販での購入者の中には、大人用の目的の人も「いるかもしれない」とのことだった。

   また、家具通販の「グランデ」(兵庫県西宮市)は、「NICKOニコ」を「2サイズ3カラー」で扱っているが、高さは2サイズとも共通(23センチ=230ミリ)。17年春に発売し、販売台数は非公表。子供用の販売が多いが、最近3か月はそれ以前の2倍程度の売れ行きの伸びをみせているそうで、担当者は「大人用としての用途にも注目が集まっているのでは」とみている。

   米国発の「スクワティポティー」の国内販売は15年春頃に始まった。日本総輸入代理店のグローバルアジアパートナーズ(東京都中央区)によると、国内販売数は非公表だが、発売当初と比較すると直近では「数十倍の差」があるほど売れている。世界総売上高は「3300万米ドル(約35億円)以上」。購入目的については、「お通じがよくなる」を目的とする購買層が多いとみている。一方で、BBCが報じたような「しゃがむ方がよい」という話の国内の一般的な浸透度については、「まだまだ知られていない(もっと知って欲しい)という認識です」と答えた。

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