以前から提唱されてきた「日韓海底トンネル」について、米著名投資家の発言などをきっかけに、再びネット上で議論になっている。
建設には、10兆円もかかるとの試算もあるが、現状はどうなっているのだろうか。
日韓関係悪化を憂い、「トンネル構想を進めた方がいい」
有力視されているトンネルの構想は、佐賀県唐津市か福岡市から、長崎県の壱岐や対馬の地上に出て、韓国の釜山市などに抜けるものだ。
総延長が210~230キロで、世界最長の海底トンネルとして知られる青函トンネルを2つ以上建設するほどの規模になっている。
日本では、2010年ごろから建設を進める民間の動きが本格化し、2013年3月には、長崎市内の団体の請願を受けて、対馬市議会が早期建設を政府に求める意見書を可決している。さらに、民間の動きは、17年に「日韓トンネル推進全国会議」の設立にまで発展した。
韓国でも、09年に当時の李明博大統領が建設の検討を始め、11年には、10年で7兆8000億円かかる試算が出た。しかし、年間600万人が利用しても採算の半分以下との見通しも示され、動きがやや下火になっている。
現在では、日本でいくつかの試算が出て、10兆円かかるとの見通しが示されている。「実現可能性を探っているが、具体的な着工の見通しは立っていない」(長崎新聞2019年6月4日付記事)のが現状のようだ。
とはいえ、民間では、まだ建設の動きが続いており、西日本新聞の2019年9月18日付朝刊記事によると、来日して福岡などを視察した米著名投資家のジム・ロジャーズ氏は、最近の日韓関係悪化を憂い、「日韓をつなぐトンネルのような構想を進めるためにお互いが働いた方がいい」と提言した。
発言きっかけにネットで拡散も...
ほかのメディアもロジャーズ氏の発言を取り上げ、こうしたことなどをきっかけに、ツイッターでも9月19日ごろから日韓トンネルの問題が議論されている。
対馬市議会の意見書可決を報じた13年のJ-CASTニュース記事も取り上げられ、複数のユーザーがツイートで拡散。中には記事が最近のものだと誤認する人もあり、投稿の中には20日夕の時点で1000以上もリツイートされたものもあった。
なお、対馬では、10年ほど前から韓国資本による不動産買収が相次いでいるとされる。これに対し、自民党の「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)は18日、漁場が荒らされたり、自衛隊基地近くも買収されたりしているとして、対馬振興法制定の要望書を政府に提出した。具体的には、日本人旅行者の航空運賃引き下げなどの対策を行うよう求めている。
対馬市内のある不動産業者は、関係悪化した7月ごろから韓国人観光客が激減しているとしたが、韓国資本の不動産買収は進んでいると取材に明かした。
「韓国からの観光客目当てに、ホテルや民宿などを作っていますね。観光客が減ったことで、困る人と困らない人がいます。ホテルや飲食店などは休業するなどして困っていますが、一方で、大声を出すなどのマナーの悪さもあった観光客が減ることに歓迎する向きもあります。様々な心配があるので、買収を喜ぶ人はいないと思います。日韓トンネルについては、話題にする人はほとんどいませんね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)