「金持ち優遇」指摘も
係争処理委の決定は9月3日で、総務省は10月4日までに再検討結果を同市に通知する必要がある。
今回の問題は、そもそも、ふるさと納税という制度の抱える問題、そして具体的な制度設計の甘さが招いたといえる。
自分が住む自治体に収めるべき税金を、自分の出身地や被災した地域などを応援したいという思いで、あえてよそに回すのが制度の趣旨で、都市と地方の間の税収格差をすこしでも埋めようという狙いでもあったが、実際には返礼品目当てのカタログショッピング化しているのは、多くの自治体に共通する。旧制度に返礼品に法的規制はなく、モラルに委ねられていたわけで、泉佐野市のような自治体が出ることを見越し、もっと早く手を打つべきだったのに後手に回った。
他方、東京都を中心に、大都市はふるさと納税による税収の流出に苦しむ事態になっている。
利用者は年々増えて300万人を超えているが、高額所得者ほど寄付への税優遇の上限額が大きくなり、富裕層の節税対策にされているという「金持ち優遇」も指摘される。寄付額の約1割といわれる手数料目当てに仲介サイトが林立し、過度な競争に拍車をかけているという問題もある。
そして、新制度にしても、返礼品の上限を寄付額の3割とした根拠は乏しい。
なにより、今回の総務省の〝敗訴〟は、国と地方は対等という地方分権の原則をないがしろにし、地方を力ずくで従わせようとした結果で、自らの制度設計の甘さの責任を地方に押し付けようとして失敗したことになる。
総務省は係争処理委の決定をないがしろにはできないし、かといって総務省の言うことを聞いて返礼品を減らすなど協力してきた自治体の手前、泉佐野市の「やり得」を許すわけにもいかず、板挟みで苦悩するともいわれる。