「日本のメディアはみんなお行儀いいから」 今度はamazonに挑んだ横田増生氏が、若者に「潜入取材」を勧める理由

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「日本メディアはみんなお行儀いいからさ」

――「権力」側、今回でいうとアマゾン側の公にしてないことに迫ろうとしている取材姿勢を感じました。海外との潜入取材に関する違いは?

横田 (潜入取材が)イギリスでは結構浸透していて、市民権もある。表側の態度だけじゃ、きれいごとしか言わんよねってイギリス人が(受け手の側も)思っている。だって表から行っても言わないじゃない? ガーディアンもやる。タイムズもやる。今回、取材したサンデーミラーもやる。高級紙から大衆紙、BBCもやっている。権力をチェックしよう、企業をチェックしようという批判精神があるよね。ていうか、言っていることを唯々諾々と信じないね。
 日本メディアはみんなお行儀いいからさ。日本で20年アマゾンがあるのにさ、潜入したの俺だけでしょ? 2回やってるでしょ? あほみたいに見えるじゃん。「またやっとるわこいつ」みたいに思う人もいるだろうけれども、本読んでもらったら、実は当たり前の国もある。ぼくらがよく知っているイギリスって国だったり、フランスだったりすんのよ。アルバイトを派遣して、その人に密着して話を聞くって感じでもいい。やり方はいくらでもある。でも日本って全然やらないよね。

   横田氏は、日本の「潜入取材」への見方の例として、ルポライター鎌田慧氏による『自動車絶望工場』(1973年)を挙げた。潜入取材の先駆けとして知られるこの作品で鎌田氏は、トヨタの期間工として働いた体験をまとめた。同ルポは、「大宅壮一賞」にノミネートされたが、受賞には至らなかった。入選されなかった件について、元朝日新聞記者の本多勝一氏が同書の講談社文庫版(1983年)の解説で、選考委員を痛烈に批判している。

   本多氏は、「選考委員たちがこのルポを選ばなかった理由というのを雑誌で読んだ」際に、「あまりのばかばかしさに呆然」としたという。そして、「茶番劇としての大宅壮一賞」(本多氏著『貧困なる精神・第2集』に収録)に書いたといい、「なにしろ『取材の仕方がフェアではない』とか『ルポを目的とする工場潜入とわかってみれば、少なからず興ざめする』といった批評なのでした」と言及した。氏は、当時自身がつづった文から一部を引用。これがその文だ。

「これはいったい、どういう意味でしょうか。ルポが目的で工場に潜入して働くことが、どうして『フェア』でなくて、『少なからず興ざめする』のでしょうか。私の身近な例でみるだけでも、朝日新聞のP記者は、かつてニッサン自動車に日雇いとして潜入し、そのひどい実態についてすぐれたルポを新聞に発表しています。また同じくQ記者は、精神病院にアル中をよそおって潜入し、連載したルポ『精神病棟』は、精神病院の恐るべき実態をさらけだして大きな影響を与えました。これらもみんな『フェアでな』くて『興ざめ』でしょうか。『ニューヨーク・タイムズ』は、あの国防省秘密文書を暴露して、日本の勇気なき新聞の絶賛を浴びましたが、あの取材方法は『フェア』だったのでしょうか」
横田 潜入取材は「卑怯だ」という見方が、日本の中にはある。だけど、裏を返してみれば、正面から『ジャーナリストです』といって聞いた情報がどれぐらい得られるのかというと、潜入取材して得られた情報が10とすると、たぶん3とか4とか、せいぜい5ぐらいじゃん?そうやって得られる情報は、大体公になっている。潜入取材で得られる情報は、真正面の取材では得られないよね。ご飯いっぱい盛っているとか、『おむつを流さないでください』とかさ。99.9%、そういう事実は名刺を持った取材では得られない。(潜入取材で得られた情報を)知ってアマゾンを使うのと、知らないで使うのとでは全然違うよね。アマゾンを使うなとは言ってないが、そんなに配達が早くなくていい荷物もいっぱいある。例えば、配達指定をかけない、すぐ来なくていいという指定などにすると、その分現場の作業負担が減りますよね。ピッキングもそうですし、配送する業者も。めちゃくちゃメリットが大きいわけじゃないですけど、仕組みがわかっていると、どうしたら現場の負担が減るかわかる。
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