東電など4社に「思惑の不一致」 原発事業の共同化検討の行く末

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   東京電力ホールディングス(HD)、中部電力、日立製作所、東芝の4社が原発の共同事業化を検討していくことで基本合意した。2019年8月28日に合意書を締結した。東電福島第1原発事故の影響で原発の先行きが見通せない中で、共同事業化によって電力会社とメーカーが人材と技術を集め、再稼働に向けた体制を整備し、新規建設にもつなげたい考えだ。ただ、発電所の運営リスクについては温度差がある。

   東電と中部電は、福島第1原発(福島県)と同型の「沸騰水型軽水炉(BWR)」と呼ばれる原発を保有・運営し、日立と東芝がそれらの建設を手掛けてきた。だが、福島第1事故後、関西電力などの「加圧水型軽水炉(PWR)」は再稼働したが、BWRは1基も再稼働できておらず、東電・柏崎刈羽原発(新潟県)、中部電・浜岡原発(静岡県)は停止したままだ。

  • 原発の共同事業化を検討していくことで4社が基本合意した(東京電力HDサイトより)
    原発の共同事業化を検討していくことで4社が基本合意した(東京電力HDサイトより)
  • 原発の共同事業化を検討していくことで4社が基本合意した(東京電力HDサイトより)

BWRの運営

   4社はBWRで結ばれた「運命共同体」といえる関係で、2018年8月、原子力事業の提携に向け本格的な協議に入る覚書を締結している。今回の基本合意について4社は、「BWRを将来にわたって安全に運営し、建設と運転につなげられる持続可能な事業の構築を目指すため」と説明している。抽象的な表現にとどまるのは、1年前の覚書から具体的に話が進んだというより、このまま停滞してじり貧になるのを避けるため、協議を加速するための意思表示をしたものと受け止められている。

   具体的には、原発の建設から運営、保守、さらに廃炉までを対象に、人材と技術を持ち寄り、原発の安全性の向上やコスト削減などを進める。2021年をめどに共同事業体を設立する構想もある。廃炉が決まっている東電の福島第1、第2は共同事業の対象から外す一方、東電が大震災で建設を中断している東通(ひがしどおり)原発(青森県)を共同事業とすることは重要な検討テーマ。また新型炉の設計に向けた研究開発の一元化なども進めたい考えだ。

   4社は「運命共同体」と書いたが、その思惑が一致しているわけではない。

   東電は福島第1の事故対応に約16兆円がかかるとして、廃炉・賠償費用を毎年5000億円確保したうえで3000億円の最終利益を出す必要がある。福島第1の全6基に加え19年7月に福島第2の全4基の廃炉を決定済みで、今後、稼働が期待できる原発は柏崎刈羽原発だけ、そして建設中が東通原発だけとあって、共同事業化で効率化・コスト削減を進めたい。

   特に電力小売りの全面自由化で東京ガスなど新電力に攻められ、顧客流出が続いており、関西電力のように、原発の再稼働で電気料金を引き下げ、競争力を回復させたい思惑がある。

   中部電も浜岡原発の再稼働の見通しが立たない中、技術継承の機会を増やしたい。

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