彼女たちはなぜ「推したくなる」のか
フィクションの中とはいえ、リアルな描写で興味と共感を呼ぶ女性アイドルオタクたち。同性でもアイドルを応援する人々の心理についても乗田さんに聞いてみると、
「平成に育った現20~30代のアイドル観そのものを振り返ると、女性グループであればモーニング娘。やAKB48、男性グループならSMAPや嵐と、身近な国民的アイドルはいずれも『物語への共感』が重要なキーワードとなり、人気を獲得していきました。その視点を踏まえると、アイドルの性別や年齢ではなく、自分が物語に共感していけるかどうかだけを、ファンはそれぞれの感性に基づいて見ているのだと思います」
と答えた。「物語」とは、アイドルそれぞれの経歴・性格などを指し、そのような内面にファンは共感できるものを見出し、応援するようになるという図式だ。「だから私は推しました」の遠藤愛も、歌もダンスも不器用で人見知りのハナに、会社や友人のコミュニティで消耗していた自身と共通するものを見出して、すべてを彼女に注ぎ込んでいく。乗田さんは、
「現在の女性アイドルと女性ファンの関係性というのは、ちょうど過渡期のようなもので、社会に残存している物珍しさと、当の女性ファンたちが発している生々しい熱量が、SNS上で激しくぶつかっている最中にあります。現在進行形の、人間と人間の感情のぶつかり合いから生まれているコンテンツが、人々の心を広く掴んでいくのはある意味必然の流れのように思います」
とも両作のヒット理由を推測する。こうしたオタクたちのエネルギーが、作品に投影されて世間の共感を呼んでいるのだろう。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)